2024.05.30
5フォースについて解説
ファイブフォース分析は、アメリカの経営学者マイケル・ポーターが提唱したマーケティング戦略フレームワークです。この分析では、業界の競合や全体の状況を詳細に評価し、新規参入の脅威や代替品の影響など5つの主要な要因を分析し、新製品開発やブランド立ち上げ時の収益最大化の戦略を検討します。本記事ではファイブフォース分析の方法と、活用法について解説します。
目次
ファイブフォース分析の5つの要因
ファイブフォース分析は、企業が直面する競争環境を理解するためのツールです。この分析では、市場の競争構造を形成する5つの主要な要因を考察します。以下でそれぞれの要因について詳しく見ていきます。
- 新規参入の脅威
新規参入の脅威は、新しいプレイヤーが市場に参入し競争を激化させる可能性を指します。市場の成長率や規模、既存企業のブランド力などによって、新規参入のハードルが決まります。参入障壁が低ければ低いほど、新規参入者の増加が見込まれ、価格競争により収益性が圧迫される可能性が高まります。 - 業界内の競合
市場内の既存競合他社の数や力を分析することで、競争の激しさを評価します。競合企業が多い業界では、差別化が困難で、それにより収益性が低くなることが一般的です。逆に競合が少ない場合、より高い収益を上げるチャンスがあります。 - 売り手の交渉力
売り手としてのサプライヤーや供給業者がどれだけの力を持っているかを分析します。仕入れ価格の交渉力が高い業者が多い場合、コストが増加し企業の収益性に悪影響を及ぼします。売り手の寡占状態や独自技術の保持は、売り手の交渉力を高める要因です。 - 買い手の交渉力
消費者や取引先企業がどれだけ価格やサービスの改善を交渉できるかを示します。買い手の力が強い場合、低価格での販売を迫られることがあり、収益性が低下する可能性があります。市場規模の変動や買い手の数の増減もこの分析において重要です。 - 代替品の脅威
市場に存在する製品やサービスが代替可能な場合、その脅威は企業にとって重大です。代替品の価格や品質、独自の特性が市場の既存製品に対して優れていれば、顧客は容易に切り替えることが考えられます。これにより、元の製品の市場シェアや収益性が著しく低下することがあります。
ファイブフォース分析によって得られるメリット
ファイブフォース分析を通じて、企業は多くのメリットを享受できます。以下では、ファイブフォース分析によって得られる主なメリットについて詳しく説明します。
- 業界内での立ち位置の明確化
ファイブフォース分析を行うことで、自社が業界内でどのような位置にいるのかが明確になります。これにより、市場内での自社の強みや弱み、機会、脅威を具体的に把握することができます。 - 競合優位性の特定と収益性の向上
分析を通じて競合他社との比較が可能となり、自社の競争優位性を明確にすることができます。この情報を基に戦略を調整することで、収益性の向上を図ることが可能です。 - 競合脅威への対策と新規参入の判断
他社の新規参入や競争の動向を把握し、それに対する適切な対策を立てることができます。また、自社の新規参入や撤退の判断も、業界の状況を基に行うことが可能となります。 - 市場の性質の理解
ファイブフォース分析を用いることで、参入市場が競争が激しい「レッドオーシャン」なのか、競争が少ない「ブルーオーシャン」なのかを把握できます。これにより、市場選択の際の判断材料とすることができます。 - 経営リソースの最適化
分析を通じて、どの業界要因にリソースを集中すべきかが明らかになります。これにより、経営リソースの配分を最適化し、効率的な運用が可能になります。 - 事業戦略の具体化とリスク管理
ファイブフォース分析の結果をもとに、具体的な事業戦略を立案することができます。さらに、未来における潜在的な脅威を予測し、それに対するリスク管理策を講じることができるため、予期せぬ損失を防ぐことにつながります。
ファイブフォース分析のメリットを十分に活用するためには、この分析の結果をもとにSWOT分析やSTP分析など他の戦略的分析と組み合わせることが推奨さており、より総合的な視点から企業戦略を練り、市場での成功確率を高めることが可能になります。
ファイブフォース分析の手順
ファイブフォース分析を行う際には、縦軸と横軸に要因を分けて検討することが重要です。以下、ファイブフォース分析を効果的に行うための具体的な手順を説明します。
ステップ1: 情報収集
分析の基礎となる情報収集から始めます。市場の現状、競合の動向、供給業者の情報、顧客の要求など、関連するすべてのデータを集めます。このデータには、新規参入企業の特徴や代替品の利用可能性も含まれます。また、業界外の異業種企業が新たな競合となる可能性も考慮することが重要です。
ステップ2: 横軸の分析
収集したデータを基に、買い手と売り手の交渉力を評価します。市場における供給業者の数や技術力、そして顧客の選択肢の広がりを分析して、どのようにこれらが価格設定や収益性に影響を与えるかを考えます。たとえば、供給業者が寡占状態であれば売り手の交渉力が強くなり、反対に買い手の選択肢が増えれば買い手の交渉力が強まる傾向があります。
ステップ3: 縦軸の分析
新規参入の脅威、業界内の競合の脅威、代替品の脅威を分析します。新規参入の容易さ、競合他社の数とその競争力、代替品の利用可能性が市場シェアや収益性にどのような影響を与えるかを検討します。これにより、業界の収益性と自社の市場でのポジションを理解することができます。
ステップ4: 戦略の策定
全ての要因を総合して、どの要因が最も影響力があり、どの脅威が最も高いかを評価します。それに基づき、自社の収益を最大化するための戦略を策定し、具体的なアクションプランまで落とし込みます。
ファイブフォース分析の注意点
ファイブフォース分析で最大限の効果を得るためにはいくつかの注意点があります。以下に、ファイブフォース分析を行う際の主要な注意点について解説します。
1. 業界の明確な定義
ファイブフォース分析を行う前に、分析対象の業界を明確に定義することが重要です。現代の市場は多様化しており、特に技術進歩が目まぐるしい分野では、業界の境界が曖昧になっていることがあります。明確な定義がなければ、分析の方向性がずれる可能性があり、正確な結果を得ることができません。
2. 客観的な分析の実施
分析を客観的に行うためには、自社のデータだけでなく、業界全体のデータを広範に収集し、公平な視点で評価することが必要です。自社の位置づけや競争優位を過大評価することなく、実際の市場環境を正しく把握することが、適切な戦略を立案するための基盤となります。
3. 参入障壁の評価と撤退の選択
市場への新規参入を検討している場合や現在参入している市場での事業継続を見直す際には、参入障壁の高さを評価し、必要に応じて撤退する選択肢も検討することが重要です。極めて高い参入障壁や、継続的な事業拡大が困難な市場条件下では、リソースの再配分や他の機会へのシフトを考えるべきです。
4. 現状分析ツールとしての位置づけ
ファイブフォース分析は、あくまで現状を整理し評価するツールであり、直接的な戦略立案や革新的なアイデアの創出につながるわけではありません。したがって、分析結果を基に、さらに具体的な戦略立案や施策の策定を行う必要があります。
5. 時代遅れのリスクへの注意
ファイブフォース分析は1980年代に開発されたモデルであり、現代の多様で複雑な市場環境においては、すべての状況に適用可能なわけではありません。特に、オープンイノベーションや共創の文脈では、この分析だけに依存することは避け、他の分析ツールと組み合わせることが推奨されます。
まとめ
ファイブフォース分析は、企業が外部環境を評価し戦略を練る上で、特に新規参入や新たなビジネスを立ち上げる際に便利なツールです。これらの力が市場における自社の収益性にどのように影響を与えるか、分析を通じて業界の構造を客観的に捉え、自社の競争優位性を明確にすることができずはずです。