日本政策金融公庫とは:融資を受ける際のメリット・デメリットも

日本政策金融公庫とは:融資を受ける際のメリット・デメリットも

日本政策金融公庫とは

「国が100%出資している財務省管轄の政府系金融機関」で、国が株式の100%を常時保有することが法律で定められている特別な株式会社です。

創業者や小規模事業者に向けた事業資金の融資ほか、「教育ローン」などの教育資金融資を行っており、地域に身近な金融機関となっています。主な取り扱いは融資などの支援業務であり、預金業務は行っていません。

業務の概要

3つの業務を柱に、「地域経済の活性化」「顧客の成長」「中小企業のグローバル化」を支援しています。

事業業務内容
国民生活事業【融資】小口事業資金国の教育ローン恩給・共済年金等を担保とする融資
【支援】創業・スタートアップ事業再生事業承継ソーシャルビジネス海外展開
中小企業事業【融資】中小企業への長期事業資金
【支援】新事業・スタートアップ事業再生事業継承海外展開証券化経営解決(ビジネスマッチング等)
【保険引受等】信用保証協会が行う債務の保証
農林水産事業【融資】担い手を育て支える農林水産業者向け食の安全確保、農食連携を支える加工流通分野向け
【経営支援サービス】コンサルティングやビジネスマッチング等

4つのメリット

  1. 民間の金融機関よりも金利が低い
    実際の適用金利は融資制度や契約内容によっても異なりますが、金利の幅が低めに設定されています。
  2. 民間の金融機関よりも返済期間が長い
    返済期間が長めに設定されている傾向があるため余裕のある返済計画を立てることができます。ただし、金利による利息は発生するため、返済期間が長ければ長いほど、返済総額は増える傾向がありますので注意が必要です。
  1. 無担保・無保証の融資制度がある
    日本政策金融公庫から融資を受ける場合、原則として保証人不要です。希望すれば、法人代表者の連帯保証を不要とする制度を選択することも可能です。
  1. 創業前でも申し込みやすく工数も少ない
    政策金融機関である日本政策金融公庫は事業に取り組む方々を支援することが目的のため、銀行や信用金庫と比較し申し込みやすい傾向があります。また、信用保証協会に提出する書類を準備する必要がないため、手続きにかかる工数が少なく済みます。

申込者の条件や利用する融資制度によっても異なりますので確認が必要です。

デメリットも・・・

  • 中小企業事業の場合は繰り上げ返済ができない
  • 審査期間が比較的長い。実際に融資を受けるまでの期間は1か月から1か月半程度かかる可能性もあります。
  • 金利の変動がない
    ー民間の金融機関は、業績が良い会社、決算内容が上向いている会社には金利を下げる傾向がありますが、日本政策金融公庫には所定の金利があるため、よかれ悪しかれあまり金利が変動しません。

これらはあくまでも一例であり、申込者の条件や利用する融資制度によっても異なりますので、早期完済や急ぎの融資を希望される場合は日本政策金融公庫の担当者に相談してみましょう。ただし、支店は納税地の住所から判断され、担当者を指名することができないのでご留意ください。

新規事業や事業承継・M&Aなど主な融資枠

以下ではスタートアップや新規事業、一時的に事業が悪化したケースや事業承継・M&Aなどの際に利用する融資枠の詳細をみていきます。

2024年5月時点で調査した内容ですので、融資制度が更新され、当ページに記載の情報が誤ったものとなる可能性があります。最新の情報や詳細については、日本政策金融公庫のサイトをご確認ください。

新創業融資制度

新規事業の立ち上げやスタートアップ企業に対する融資支援制度です。これまでに年間26,000件以上の創業企業に融資を提供し、創業支援も行っています。融資の用途は主に新事業の開始や運転資金、設備資金に限られ、最高融資限度額は3,000万円で、そのうち運転資金は1,500万円までとなります。利率は用途や返済期間によって異なります。ただし、この制度は単独での利用はできず、他の日本政策金融公庫の融資制度と併用する必要があります。対象者は事業立ち上げ前または2期未満の税務申告終了者であり、併用可能な融資制度は限られているので注意が必要です。

要件新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金が確認できる方
融資限度額3,000万円(うち運転資金1,500万円)
金利0.90%~3.35%

海外展開・事業再編資金

海外展開を計画する企業に対し、「海外展開・事業再編資金」を提供しています。最大7,200万円の融資限度額と、20年または7年の返済期間が特徴で、2年間の元本返済免除もあります。

要件開始または拡大しようとする海外展開事業が、国内における事業の延長と認められる程度の規模をであること事業活動拠点(本社)が国内に存続すること経営革新の一環として、取引先の海外進出、原材料の供給事情、労働力不足、国内市場の縮小などにより海外展開すること
融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)
金利0.65%~3.5%

事業承継・集約・活性化支援資金

中期的な事業承継計画を持つ企業や現経営者と後継者が共同で計画を立てる場合に提供されます。この制度は、事業承継計画の実施や事業の集約、新たな事業進出や転換に必要な設備資金や運転資金をサポートします。特別利率や挑戦支援資本強化特例制度などの特典も提供されます。条件には、事業承継計画の共同策定、経営権の安定化や集約、新規事業進出、中小企業経営承継円滑化法に基づく認定、個人負担免除による資金難などが挙げられます。

要件中期的な事業承継を計画し、現経営者が後継者(候補者を含みます。)と共に事業承継計画を策定していること安定的な経営権の確保等により、事業の承継・集約を行う方および当該事業者から事業を承継・集約される方など
融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)
金利0.65%~3.5%

セーフティネット貸付

取引先の倒産や業績悪化、パンデミックや自然災害など社会的・経済環境の変化などによる原因で業績が一時的に悪化してしまった方を対象とした制度です。

要件社会的、経済的環境の変化等外的要因により、一時的に売上の減少等業況悪化をきたしているが、中長期的にはその業況が回復し発展することが見込まれる方かつ、最近の決算が前々期に比し5%以上減少している方、最近の決算の純利益額または売上高経常利益率が前期または前々期と比較して悪化している方、社会的な要因による一時的な業況悪化など
融資限度額4,800万円
金利0.65%~3.5%

挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)

新規開業融資や女性、若者/シニア起業家支援資金などの融資において、一定の条件を満たす場合に適用される特例制度です。この融資制度の最大の特徴は、金融検査上「借入金」としてではなく「自己資本」として扱うことができる点です。これにより、自己資本比また創業融資を受ける際、経営者保証免除特例制度や創業支援貸付利率特例制度(https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/sogyo_tokurei_m.html)は他の融資と併用することで、各融資の金利を軽減することもできるので合わせて検討してみてもよいかもしれません。

自己資本比率を下げることなく資金調達が可能で、追加融資における信用力の低下が避けられます。ただし、会計上は負債として扱われることに注意が必要です。また、資本性ローンは法的倒産手続き時にはすべての債務に劣後する特性も持ち無担保・無保証人での借り入れが可能で、メザニンファイナンスとも呼ばれています。

要件下記いずれかの融資制度の対象となる方新規開業資金新事業活動促進資金海外展開・事業再編資金事業承継・集約・活性化支援資金企業再建資金ソーシャルビジネス支援資金
融資限度額7,200万円
金利0.5%~4.65%

経営者保証免除特例制度

融資を受ける際に法人代表者の連帯保証を不要とする制度です。一定の条件を満たせば経営者保証を外して融資を受けることができ、経営者の心理的負担が軽減されるなどの理由から選ばれています。特定の融資制度を除き、代表者保証が付くのが原則ですが、2018年春に適用要件が緩和され、代表者保証が免除される対象範囲が広がりました。

日本政策金融公庫「経営者保証免除特例制度」:https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/keitoku.html

要件経営状況等から借入返済が可能と見込まれる法人で次の要件などに当てはまる方新規開業後おおむね5年以内かつ技術・ノウハウ等に新規性がみられる方事業承継・集約・活性化支援資金または生活衛生事業承継・集約・活性化支援資金を利用される方新たに事業を始める方または税務申告を2期終えていない方ソーシャルビジネス支援資金を利用されるNPO法人
金利0.65%~3.5%※上乗せ利率がかかる場合も

中小企業経営力強化資金

認定支援機関の指導や助言を受けることで利用可能な融資制度です。事業者単独では利用できず、利用には金融関連の専門知識を持つ認定支援機関の協力が必要です。自己資金は不要ですが、審査の際に一定の自己資金がある方が有利です。中小企業経営力強化資金と新創業融資制度を併用する場合には、1/10以上の自己資金が必要となります。

要件新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓をおこない、かつ、事業計画書を策定し、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を完全に適用していて、かつ、事業計画書を策定する方など
融資限度額7億2,000万円
金利0.65%~3.5%

おわりに

日本政策金融公庫は財務省管轄の政府系金融機関のひとつであり、中小企業や小規模事業者に向けて融資を行っています。
すでに事業を始めている事業者だけでなく、新たに起業・開業を予定している事業者や新たな会社を設立する事業者でも融資が受けられるます。また、民間の金融機関の支援が届かない部分を補填する側面もあり、銀行や信用金庫などから融資が受けにくい方々に寄り添いサポートする制度も準備されています。開業費用や会社設立費用に不安がある場合におすすめですので、選択肢の一つとして検討ください。

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