2024.06.27
零細・中小・大手企業の違いとは?それぞれの税制や補助金についても解説

「あそこは大企業だから」「ウチは零細企業なので」といったフレーズがビジネスパーソンの会話で飛び交うことは少なくありませんが、「大企業」「中小企業」「零細企業」という言葉に明確な基準はあるのでしょうか?
「小さな会社」と言っても、その具体的な規模は分かりにくいものです。ここでは、零細企業、中小企業、大企業の違いについて解説します。
零細企業とは?
零細企業には法律上の定義はありませんが、一般的に非常に小規模な企業を指します。零細企業という言葉には「わずかな設備や資本で運営される、ごく小さな規模の企業」という意味がありますが、法的には「小規模企業者」に該当することが多いです。
中小企業基本法で定められている小規模企業の基準は次の通りです。
・製造業・建設業・運輸業・その他の業種: 常時使用する従業員数が20人以下
・卸売業・小売業・サービス業: 常時使用する従業員数が5人以下
2013年9月に施行された「小規模企業活性化法」により、小規模企業の範囲は政府の政令で変更可能となりました。例えば、従来「サービス業」として扱われていた宿泊業や娯楽業も、従業員数が20人以下であれば小規模企業として分類されます。
小規模企業者は法人登記を行っており、技術力支援などの支援体制が整っています。しかし、従業員数が20人または5人以下でも、法人登記をしていない所得300万円以下の事業主は「会社」としては扱われず、法律や補助金の適用範囲が異なります。つまり、零細企業であるかどうかは従業員数だけで判断できないのです。
零細企業という言葉は、大企業や中小企業と比較して資本金が少なく、従業員数が少ない企業を表す言葉として理解されるとよいでしょう。
中小企業とは?
中小企業には明確な定義が存在し、中小企業基本法という法律によってその規模が業種ごとに定められています。以下に業種別の基準を示します。
サービス業
・資本金の額または出資の総額が5千万円以下
・従業員数100人以下
小売業
・資本金の額または出資の総額が5千万円以下
・従業員数50人以下
卸売業
・資本金の額または出資の総額が1億円以下
・従業員数100人以下
製造業・建設業・運輸業・その他の業種
・資本金の額または出資の総額が3億円以下
・従業員数300人以下
これらの基準により、中小企業は業種ごとに異なる資本金や従業員数の条件で分類されます。規模は小さいものの、零細企業よりも資本金や従業員数が多い点が特徴です。
大企業とは?
「大企業」には法律上の明確な定義はありませんが、一般的に資本金や従業員数が中小企業の基準を超えている企業を指します。また、資本金や従業員数が基準以下でも、大企業と密接な関係を持つ企業は「みなし大企業」とされ、中小企業向けの補助金や助成金の対象外となることがあります。
企業規模の区分は何に関係する?
企業規模の区分は、補助金や支援制度、法人税の税率など多くの面で重要な役割を果たします。
まず、中小企業には国からさまざまな補助金や助成金が用意されています。例えば、資本金1億円以下の企業には、法人税が大企業よりも低く抑えられた軽減税率が適用されます。具体的には、年800万円以下の所得金額部分には15%、それを超える部分には23.2%の税率が適用されます(2018年8月現在)。また、小規模企業には「小規模事業者支援法」といった法律が定められ、経営の発展を支援する体制が整っています。
零細企業(法的には小規模企業)は企業の規模に関わらず、自社を謙遜して「零細企業」と表現する場合もあります。しかし、他社や取引先に対して「零細企業」という言葉を使うのはビジネスマナー的に避けた方が良いでしょう。
日本政府の調査によると、国内にある382万の企業のうち380万9千社が中小企業で、そのうち85%以上が小規模企業です。これらのデータから、日本経済の大部分が中小企業によって支えられていることがわかりますが、大企業との生産性の格差が広がっていることも問題となっています。また、近年では毎年約3万件の中小企業が倒産し、8500件前後の事業者が休廃業・解散しています。これは毎年4万件近い中小企業が市場から退出していることを意味します。特に「経営者の高齢化」が大きな要因とされ、東京商工リサーチの調査では、2017年に休廃業・解散した企業の8割は経営者が60代以上でした。
このような状況から、中小企業が長期的に事業を継続・発展させるためには、次世代への事業承継が不可欠であることがわかります。
一方で、国は中小企業基本法に基づき、多種多様な中小企業施策を実施しています。例えば、「技術力の強化支援」に関する施策には以下のようなものがあります(2023年度時点)。
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
- 成長型中小企業等研究開発支援事業
- IT導入補助金
- SBIR制度に基づく支援
- 中小企業技術基盤強化税制(研究開発税制)
- 省エネ関連設備等の導入支援
- CIP(技術研究組合)制度
- 公設試験研究機関(公設試)
- グリーントランスフォーメーション関連融資事業
上記は「技術力の強化支援」の一例に過ぎません。他にも、創業・ベンチャー支援、経営革新支援、新たな事業展開支援、知的財産支援、再生支援、事業承継の支援など、多岐にわたる施策が存在します。自社のDX化を図りたい企業は、IT活用促進資金やIT導入補助金を活用することができます。また、経営効率化を目指す企業は、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金や地域未来投資促進税制などの施策を利用すると良いでしょう。
これらの施策の対象となるのは、中小企業基本法で定義された中小企業者のみです(一部範囲が異なる場合もあります)。自社の経営革新や事業展開を行いたい場合は、条件に該当するかを確認し、積極的に活用しましょう。
補助金や助成金について、最新情報を知りたい方はお問い合わせ先までご連絡ください。