起業時の資金調達手法まとめ:融資、出資、補助金・助成金について解説

起業時の資金調達手法まとめ:融資、出資、補助金・助成金について解説

起業や事業拡大には、十分な資金が不可欠です。起業や事業運営には多岐にわたる費用が発生し、例えばオフィスの賃料、従業員の給与、広告宣伝費などに加え、商品の開発や製造、販促活動にも資金が必要です。しかし自己資金だけでは賄えない場合があり、このような時に資金調達が重要になります。

資金調達の方法は複数あり、返済が伴う融資や返済不要の出資などが一般的です。これらの方法にはそれぞれメリットとデメリットがあり、起業家は自らの状況に合わせて選択する必要があります。資金調達の基本的な考え方は、「負債を増やす」か「資本を増やす」かに帰結します。負債による調達では、返済義務が生じますが、経営への干渉を受けずに資金を調達できる利点があります。一方、資本調達では返済の必要がなく、経営に関わる自由度が高いです。どちらの方法を選ぶにせよ、リスクや利点を理解し、慎重な計画が求められます。

この記事では、起業時の資金調達に焦点を当て、さまざまな方法やそのメリット・デメリットを紹介します。出資や融資、補助金などをメインに、具体的に起業家が直面するリスクや資金調達のプロセスについても解説していきます。

起業時に必要な資金の目安

一般的な起業資金の目安は500万円未満とされていますが、業種や業態によって必要な金額は異なります。日本政策金融公庫の調査によれば、起業費用の平均は1,000万円程度であり、特に店舗費用が高額になる業種ではさらに増加します。例えば、飲食業や美容業では1,000万円以上の資金が必要とされることがあります。これらのビジネスを展開する場合は具体的な内訳を把握し、店舗の内外装や運転資金など、必要な費用を明確にしておくことが重要です。

また同じく日本政策金融公庫の調査から、資金調達額の平均は1,274万円となっています。資金調達の方法としては、金融機関からの借り入れと自己資金が主流であり、金融機関からの借り入れが全体の90%以上を占めています。資金調達額は業種やビジネスの規模によって異なるため、業種毎に最適な資金調達手法を選択、事業の成長に向けて適切な資金を確保する必要があります。

参考:日本政策金融公庫「2022年度新規開業実態調査」

融資について

融資は起業の主要な資金調達手段の一つであり、借入金を利用して資金を調達します。これはデットファイナンスと呼ばれ、返済を前提にお金を借りる方法です。主な借り入れ先は金融機関や公的機関であり、銀行や政府系金融機関、地方公共団体からの融資が挙げられます。融資を受ける際は、期限つきで借り入れを行い、期日までに元本と利息を返済する必要があります。これにより、資金調達に関する柔軟性や利便性が向上しますが、金利の支払いや返済期限の遵守が求められます。

融資のメリットは、適切に返済すれば経営に干渉されない点や、利息を損金に計上できるため、税金の負担を軽減できる点が挙げられます。一方で、デメリットとしては借入金が負債となり、自己資本比率が下がることや、月々の返済が必要であるため資金繰りに注意が必要です。また、金融機関によっては審査が厳しく、希望額を調達できないリスクもあります。

一般的な融資の流れは、事業計画書を各金融機関に提出し、審査をクリアすることから始まります。その後、制度融資や一般融資など、適切な融資方法を選択し、必要な手続きを行います。

銀行からの融資

銀行融資は、プロパー融資と信用保証融資の2つに分かれます。プロパー融資は返済が滞った場合のリスクを銀行が負うため、審査が厳しく、新規事業には難しい場合があります。一方、信用保証融資は全国信用保証協会連合会が保証人となり、返済が滞っても連合会が支払うため、銀行のリスクが少ないため審査基準が緩い傾向にあります。しかし、銀行からの融資には金利負担と信用保証協会が定める保証料が発生するデメリットがあります。

銀行融資のメリットとしては、顧客・ビジネスパートナーの紹介や情報提供を得られる場合があり、多額の借入が可能で経営の介入がないことが挙げられます。銀行からの融資は返済実績を作ることで信頼度が上がり、その後の融資も受けやすくなる傾向があります。一方、金利負担が発生し、設立直後の会社では利用が難しく、審査が厳しく希望の融資金額にならない恐れがあります。また地方銀行や信用金庫の方が融資のハードルが低い傾向があります。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は国が100%出資している政府系金融機関で、起業や中小企業支援を目的としています。その中で、起業・創業者向けの融資制度として「新創業融資制度」があります。この制度では最大3,000万円の融資が可能で、自己資金が十分にあれば無担保・無保証人で利用できます。迅速な審査も魅力の一つですが、金利が他の制度に比べてやや高めなので、十分な検討が必要です。

出資について

出資は、企業や事業の成長の期待を受けて資金を募る方法であり、個人投資家やベンチャーキャピタルなどが出資元となります。出資を受ける際のおすすめポイントとしては、返済が不要であり、経営アドバイスを受けられる可能性が挙げられます。しかし、起業・開業直後は出資を受けにくい場合や、出資比率が増えることで経営に制約を受ける可能性がある点に注意が必要です。また、出資を受けることで持ち分比率が下がり、将来的な利益の取り分が減る可能性も考慮すべきです。

ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資も一般的になってきていて、ベンチャーキャピタルは将来性のあるベンチャー企業に出資し、成長後のエグジットで利益を得ることを目指します。一方、エンジェル投資家は起業前や直後の会社に投資を行う個人投資家であり、出資を受ける際の審査は比較的緩やかですが、出資を行う際には事業計画や経営者の信頼性が重視されます。

出資には返済義務はないものの、出資者は通常、出資先の経営に影響力を持つことから、事業計画や経営戦略についての説明や対話が重要です。

ベンチャーキャピタル

ベンチャーキャピタルは、上場や事業売却を見据えた大規模な事業展開に適した資金調達方法です。ベンチャーキャピタルの存在意義は、事業の成長を促進し、企業売却や株式売却を通じて利益を得ることにあり、経営資源や新たなアイデアの提供だけでなく、若い起業家のサポートも含まれます。

出資は資本と引き換えに行われますが、立ち上げ直後に受け入れるのは難しく、上場を目指す有望な会社に限られ、出資条件や契約条項にはかなりの注意が必要なこと、起業家の保有株比率はが低下し、ベンチャーキャピタルの経営方針に従う必要が出てくる場合もあります。
利点としては、短期的な成長を視野に、経営アドバイスやビジネスパートナーの紹介などのサポートが期待できます。

エンジェル投資家

エンジェル投資家は、個人投資家が自己資金によって起業直後の企業や成長性の高い企業に期待して投資を行います。この方法は金融機関や公的機関の審査を受ける必要がなく、出資までのスピードが速いのが特徴です。資金調達額の規模は中程度で、ベンチャーキャピタルとクラウドファンディングの間に位置します。

プロダクトやサービスが形になっていない段階、もしくは事業の立ち上げを目指す創業段階で出資することもあり、事業計画や起業家の情熱も投資の判断材料となります。エンジェル投資家の出資を受けることで、銀行からの融資が難しい場合でも資金調達が実現する可能性があります。

クラウドファンディング

クラウドファンディングはインターネットを活用して資金を集める方法で、寄附型、購入型、融資型などさまざまなタイプがあります。小規模な会社や個人事業主でも手軽に資金調達が可能で、事業計画や商品の実現性をテストする場としても活用できます。クラウドファンディングでは、リターンや説明などの準備が必要であり、強い特徴やストーリーがない場合は資金調達が難しくなることがあります。

一口ごとの金額が小さくなりやすい反面、SNSやクラウドファンディングプラットフォームを通じて全国各地でファンを育成することがでたり、リスクなくチャレンジできる点がメリットとして挙げられます。
一方で、目標金額に達成できないリスクや、リターンや説明の準備に時間がかかる点には注意が必要です。またクラウドファンディングの知名度が高まり、競争が激化する中では、強い独自性や共感を生むストーリーがなければ成功が難しいこともあります。

補助金について

補助金と助成金は、国や地方自治体による支援制度であり、これらの支援金は返済は不要です。例えば、経済産業省が管轄する「ものづくり補助金」や「小規模事業者持続化補助金」なども、起業時に活用できる補助金です。

補助金と助成金の違いは、申請の難易度や申請期間にあり、助成金は一定の要件を満たせば受給できる可能性が高い一方、補助金は予算や採択の上限があるため、申請のタイミングや要件を満たしていても受給できない場合があります。また、補助金は申請期間が短く、助成金は申請から支給までにタイムラグが生じることがあります。

注意点としては受給までに数か月かかる場合があり、申し込んでも必ずしも採択されるわけではありません。また、補助金・助成金は創業前や創業後の申請が可能ですが、条件に応じて対象地域や活動期間が限定されることもあるため、注意が必要です。

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