経営力向上計画の認定を受けるには?対象者や申請方法を解説

経営力向上計画の認定を受けるには?対象者や申請方法を解説

みなさんは「経営力向上計画」はご存知でしょうか。経営力向上計画は、法認定制度とも呼ばれる「中小企業等経営強化法」などに基づいた認定制度の一つとなっています。

法認定制度の認定を取得することによる税制上のメリットや金融上のメリットが存在しますが、今回は「経営力向上計画」に焦点をあて、認定を受けるための申請方法について解説します。

経営力向上計画を含む
法認定制度の概要や各制度ごとのメリット一覧

経営力向上計画とは?

経営力向上計画は、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画で、認定された事業者は、税制や金融の支援等を受けることができます。また、計画申請においては、経営革新等支援機関のサポートを受けることが可能です。

<支援措置の概要>

  • 生産性向上のための設備を取得した場合に、中小企業経営強化税制が活用可能で、取得した設備について、減価償却ではなく即時償却が可能になるなどの税制優遇
  • 計画に基づく事業において必要となる資金繰りの支援(融資・信用保証等)
  • 認定された事業者が補助金等に申請する際の加点(優先採択)
  • 事業承継などを行った場合に、不動産の権利移転に係る登録免許税・不動産取得税の軽減及び準備金積立(損金算入)による法人税軽減
  • 各業法にて定められている許認可の承継を可能にする等の法的支援

なお、経営力向上計画の認定を受けるメリットについてはこちらの記事で詳細に解説しています。

中小企業庁|経営力向上計画のサイトはこちら(外部リンクに遷移します)

経営力向上計画の対象者

経営力向上計画の対象者は従業員数2000人以下の特定事業者となっています。

また、特定事業者に該当する組織形態については、株式会社などの「会社」はもちろんのこと、個人事業主、組合※、一般社団法人、医療法人等(主に医業、歯科医業を主たる事業とする法人)、社会福祉法人、特定非営利法人(NPO法人)が対象となっています。

※企業組合、協業組合、事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、商工組合(「工業組合」「商業組合」を含む。)、商工組合連合会(「工業組合連合会」「商業組合連合会」を含む。)、商店街振興組合、商店街振興組合連合会、 生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会、酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会、酒販組合、酒販組合連合会、酒販組合中央会、内航海運組合、内航海運組合連合会、技術研究組合

そのため、多くの事業者が対象となっており、何らかの設備導入を行う際には積極的に活用したい認定制度となっています。

経営力向上計画の認定を受ける方法

経営力向上計画の認定を受けるためには、経営力向上計画の策定及び申請が必要となります。また、既に経営力向上計画の認定を受けている場合には変更申請が必要となります。

なお、申請から認定を受けるまでの期間の目安は次のようになっています。

  • 標準的な処理期間としては30日(土日祝除く)
  • 経済産業部局のみに提出する電子申請の場合は14日(土日祝除く)
  • 提出先が複数の省庁となる場合は約45日(土日祝除く)

※不動産取得税の軽減措置又は許認可承継の特例を利用する場合は45日からさらに増加

経営力向上計画の策定

経営力向上計画を策定する際には、「事業分野別指針」もしくは「基本方針」のいずれかに基づいた計画を策定する必要があります。

具体的には、経営力向上計画に取組む事業の分野が、以下の事業分野のいずれかに該当する場合、該当する「事業分野別指針」を踏まえた計画計画を策定し、
いずれにも該当しない場合には「基本方針」に定められている「経営力向上の定義及び内容に関する事項」と「経営力向上の実施方法に関する事項」を踏まえた計画を策定します。

<個別に指針が定められている事業分野>

  • 製造業
  • 卸・小売業
  • 外食・中食
  • 旅館業
  • 医療
  • 保育
  • 介護
  • 障害福祉
  • 貨物自動車運送業
  • 船舶産業
  • 自動車整備
  • 建設業
  • 有線テレビジョン放送業
  • 電気通信
  • 不動産業
  • 地上基幹放送分野
  • 石油卸売業・燃料小売業
  • 旅客自動車運送事業
  • 職業紹介事業・労働者派遣事業分野
  • 学習塾業分野
  • 農業分野

なお、事業分野別指針及び基本方針については、こちらの中小企業庁のサイトにて公開されています。

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/kihonhoushin.html


また、提出する申請書は基本的には経営力向上計画申請プラットフォームにて作成が可能で、記入項目のエラーチェックや自動計算等のサポート機能を活用した申請書作成が可能です。

ただし、経営力向上計画申請プラットフォームを利用した申請書の作成には、gBizIDプライムが必要です。

なお、申請書の様式や記載例については、こちらの中小企業庁のサイトにて公開されています。

事業分野ごとに記載例が公開されているため、参考にしながら計画の策定を行うことが可能です。

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/ninteisinsei.html


そして、経営力向上設備等を取得する計画を策定する場合には、工業会等による証明書や経済産業局による確認書が必要です。その経営力向上設備の要件や確認者については表のとおりです。

類型要件確認者対象設備その他要件
A類型生産性が旧モデル比平均1%以上向上する設備工業会等機械装置(160万円以上)

工具(30万円以上)
※A類型の場合、測定工具又は検査工具に限る

器具備品(30万円以上)

建物附属設備(60万円以上)

ソフトウェア(70万円以上)
※A類型の場合、設備の稼働状況等に係る情報収集機能及び分析・指示機能を有するものに限る
  1. 生産等設備を構成するもの
    ※事務用器具備品・本店・寄宿舎等に係る建物付属設備、複利厚生施設に係るものは該当しません。(※4)
  2. 国内への投資であること
  3. 中古資産・賃貸資産でないこと等
B類型投資収益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備経済産業局
C類型可視化、遠隔操作、自動制御化のいずれかに該当する設備
D類型修正ROAまたは有形固定資産回転率が一定割合以上の投資計画に係る設備

経営力向上計画の申請方法

今までは郵送提出する必要があった「経営力向上計画に係る認定申請書」ですが、経営力向上計画申請プラットフォームからの電子申請が可能となりました。

なお、経営力向上計画申請プラットフォームを利用した申請書の作成には、GビズIDが必要となりますが、gBizIDエントリーでは申請不可のため、gBizIDプライムを用意する必要があります。

経営力向上計画申請プラットフォームについては、経済産業省や総務省は電子申請・電子認定に対応しています。しかし、そのほかの一部の省庁では電子申請のみの対応、もしくはいずれも非対応となっています。その場合は、申請書を当該プラットフォームで作成し、申請書を出力する形での利用となります。
(令和4年以降、電子申請への移行が行われているため、多くの場合は問題ありませんが、念のため、申請前に一度確認をすると安心です。)


経営力向上計画に取り組む事業分野に応じて提出先が異なったり、どの支援措置を利用するのかによって異なったりします。
提出先を間違えると、正しく支援措置が受けられないリスクもあるため、必ず経営力向上計画のサイトにアクセスし、「事業分野と提出先」を確認するようにしましょう。

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/


経営力向上計画の申請については、以下のような書類が必要です。

提出先と同様に、どの支援措置を利用するのかによって必要な書類が異なるため、注意しましょう。

■すべての事業者が共通で必要な書類

  • 経営力向上計画認定申請書(原本)
  • 経営力向上計画認定申請書(写し) |都道府県に提出する場合のみ

※一部の省庁宛て・都道府県経由が必要な申請等について電子申請不可

■電子申請ではなく紙で提出する場合

  • 経営力向上計画チェックシート
  • A4サイズの認定書を折らずに返送可能な返信用封筒

※都道府県経由での申請の場合、返信用封筒に加えて、転送用封筒(提出先省庁を宛名に記載したもの)を併せて提出

設備投資について税制措置を受ける場合(中小企業経営強化税制A類型の税制措置)

  • 工業会等による証明書(写し)

設備投資について税制措置を受ける場合(中小企業経営強化税制B~D類型の税制措置)

  • 投資計画の確認申請書(写し)
  • 経済産業局の確認書(写し)

※発電設備等の取得等をして税制措置を適用する場合、「発電設備等の概要等に関する報告書」も併せて必要

■事業承継等について支援措置を受ける場合

  • 事業承継等に係る基本合意書等の相手方の合意を示す資料
  • 事業承継等に係る誓約書
  • 被承継者が特定許認可等を受けていることを証する書面|許認可承継の特例を受ける場合のみ
  • 貸借対照表・損益計算書|中小企業信用保険法の特例による金融支援を受ける場合のみ
  • 事業承継等事前調査チェックシート| 事業承継等事前調査に関する事項を記載する場合のみ

参考:申請書様式類(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/)

変更手続きについて

認定を受けたのちに、設備の追加取得等の経営力向上計画を変更しようとする場合には、変更手続きを行い、その認定をした主務大臣の認定を受ける必要があります。

なお、経営力向上計画に追加する設備についても、申請時と同様に、原則、設備を取得する前に経営力向上計画の変更認定を受けなければならないため、注意が必要です。

※設備を取得した後に経営力向上計画の変更申請を提出する場合、取得から60日以内に変更申請が受理されることが求められます。

また、変更手続きの際の必要書類については、初回の電子申請の際に必要な書類と大きくは変わらないものの、新旧の経営計画認定申請書(原本及び写し)と実施状況報告書など、一部必要な書類が異なります。

加えて、変更手続きの際に、新たに支援措置の利用を希望する場合には、支援措置ごとに必要な書類を揃える必要があります。

参考:申請書様式類(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/)

その他の手続き

上記の手続きのほかにも、ケースバイケースで追加の手続きが必要となります。

ケース1:登録免許税の軽減措置を受ける場合

軽減措置の対象であることを示す租税特別措置法適用証明申請書を計画認定の省庁に2部提出し、適用証明書を受け取る。

ケース2:事業承継等を実行した場合(計画内容に基づいた事業承継後)

提出し認定を受けた経営力向上計画の内容に沿って、事業承継等(合併、会社分割又は事業譲渡)を実行した場合、認定を受けた省庁への報告を行う。

ケース3:中小企業事業再編投資損失準備金・経営強化税制D類型を活用した場合

経営力向上計画の支援措置として、「中小企業事業再編投資損失準備金」もしくは「経営強化税制D類型」を活用した場合、毎事業年度終了後に事業承継等状況報告書の提出を行う。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

経営力向上計画には多様なメリットがあり、特に「取得した設備(資産)の一括償却」「新規事業のためのもしくは海外展開のための融資等に関する優遇」については、ものづくり補助金や事業再構築補助金などとの相性も非常に良いため、ぜひ併用したい制度となっています。

直近のものづくり補助金に関する記事はこちら

しかし、申請については、経営力向上のための取り組みが属する事業分野ごとの計画の策定が必要だったり、どの支援制度を活用するのかを検討した上で、必要書類を揃えたりなど、申請時には留意すべき点が多くあります。

株式会社G&Nでは、補助金の活用支援だけでなく、「経営力向上計画」をはじめとした各種法認定制度の支援も行っております。

また、税制措置のうち、中小企業強化税制のC類型に該当する計画の場合、弊社のような「認定経営革新等支援機関」からの事前確認書(所轄の経済産業局に送付する書類)が必要となります。

そのため、「取得資産の一括償却や資金調達における優遇措置にご興味がある」もしくは「補助金と併せて法認定制度も取得したい」という事業者様は、まずは一度ご相談ください。

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