2025.08.01
事業転換に伴う人材育成を支援!人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の詳細を解説

事業環境が急速に変化するなか、企業が生き残るためには「人材の再教育(リスキリング)」による職務転換やスキルの高度化が欠かせません。しかし、新規事業の立ち上げや業態転換に取り組む企業にとって、社員を新たな職務に適応させるための教育コストは大きな負担となります。
こうした背景を受け、厚生労働省では「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」を設け、企業の戦略的な人材育成を支援しています。この制度では、事業主が雇用する労働者に対して、その職務に関連した専門的な地域や技能を習得させるための以下のような訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成します。
- 企業において事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練
- 事業展開は行わないが、事業主において企業内のデジタル・デジタルトランスフォーメーション(DX)化やグリーン・カーボンニュートラル化を進めるにあたり、これに関連する業務に従事させる上で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練
本記事では、事業展開等リスキリング支援コースの概要や助成金額、対象となる訓練、スケジュール等を詳しく解説します。
新たな事業分野における人材育成をお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。
助成金額・助成率
事業展開等リスキリング支援コースにおける助成金額・助成率は下表の通りです。
受講者1人1時間あたりの経費助成限度額について
事業展開等リスキリング支援コースでは、1事業所当たりの1年度の助成限度額が1億円までとなっていることに加えて、受講者1人1訓練あたりの経費助成限度額について、以下の通り上限が設けられているため、注意が必要です。
助成対象となる訓練内容
助成対象となる訓練は、以下の実施目的・実施方法を満たす訓練であり、訓練時間が10時間以上の「OFF-JT」となります。
■訓練の実施目的
職務ごとに関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練であることが必要であり、例えば下表のように、対象労働者の職務と訓練の内容が関連するものは基本的に対象となります。
<助成対象となる訓練内容の具体例>
| 申請者の事業内容 | 対象労働者の職務 | 訓練の内容 |
|---|---|---|
| 建設業 | 土木工事の現場での施工計画の作成・工程管理・安全管理など | 土木施工管理技士の資格を取得させるための訓練 |
| 情報通信業 | システム設計・開発・保守 | プログラミング言語やプロジェクト管理手法、セキュリティに関する知識を習得させるための訓練 |
| 運輸業 | 集荷、荷積・荷下ろし、配送・配達等 | 大型自動車運転免許を取得させるための訓練 |
| 福祉 | 利用者の身体的・精神的ケア、部下の指導・育成 | 介護福祉士の受験資格を取得させるための介護福祉士実務者研修 |
| 専門・技術サービス業 | 道路設計のための測量 | 測量士補の資格を取得させるための訓練 |
| 共通 | 営業企画 | Webマーケティングの手法を身に着けさせるための訓練 |
| 共通 | 人事・労務管理 | 労働関係法の法改正のポイントや、採用や人材の定着・活用に関する訓練 |
| 共通 | 社内DXのプロジェクトリーダー | PLに必要なリーダーシップやコミュニケーションなど、プロジェクト推進力を身に着けさせるための訓練 |
■訓練の実施方法
助成対象となる訓練の実施方法は、①通学制、②同時双方向型の通信訓練、③eラーニング、④通信制、⑤定額制サービスによる訓練のいずれかとなります。
| 訓練実施方法 | 詳細 |
|---|---|
| ①通学制 | 教育訓練機関に通学し対面で訓練等を受講すること |
| ②同時双方向型の通信訓練 | OFF-JT又はOJTにおいて、情報通信技術を活用した遠隔講習であって、一方的な講義ではなく、現受講中に質疑応答が行えるなど、同時かつ双方向的(オンライン)に実施される形態であること |
| ③eラーニング | コンピュータなど情報通信技術を活用した遠隔講習であって、訓練等の受講管理のためのシステム(LMS)等により、訓練等の進捗管理が行えるもの |
| ④通信制 | 通信の方法により一定の教育計画の下に、教材や補助教材等を受講者に提供し、必要な指導者がこれに基づき、設問回答、添削指導、質疑応答等を行うもの |
| ⑤定額制サービスによる訓練 | 一訓練当たりの対象経費が明確でなく、かつ同額で複数の訓練を受講できるeラーニング及び同時双方向型の通信訓練で実施されるもので、以下の条件を満たすもの 職務関連の専門知識、技能習得のための「職務関連教育訓練」であり、支給対象訓練の割合が講座数全体の5割以上であること各支給対象労働者の受講時間数を合計した時間数が、支給申請時において10時間以上であること訓練の実施期間が1年以上であること |
eラーニング・通信制・定額制サービスによる訓練を実施する場合の注意点
広く当該訓練等の受講者を募るために、計画届の提出日時点で、自社(教育訓練機関)のホームページに当該訓練等の情報(当該訓練等の概要、当該民間の教育訓練機関の連絡先、申込みや資料請求が可能な状態であることが分かること)を掲載していることが必要です。
※特定の事業主に提供されることを目的としたものや、広く当該訓練等の受講者を募っていることを外形上装っているだけのもの(実際には広く受講者を募っていないもの)、SNSやメール等の送付のみのものは対象となりません。
■その他の要件
自社で行う企画・主催・運営を行う事業内訓練を実施する場合、訓練を行う講師に対する支給要件(OFF-JT講師要件)を満たしている部内講師(申請事業主の役員等、又は雇用されており勤退状況が確認できる者)又は部外講師(部内講師以外であり社外の者)による訓練である必要があります。
ただし、③eラーニング・④通信制・⑤定額制サービスによる訓練を事業内訓練として助成対象とすることはできません。
OFF-JT講師要件(クリックで詳細表示)
| 部外講師 | 部内講師 | OFF-JT講師要件 |
|---|---|---|
| 〇 | – | 公共職業能力開発施設、職業能力開発総合大学校、職業能力開発促進法法第15条の7第1項ただし書に規定する職業訓練を行う施設、認定職業訓練を行う施設、学校 教育法による大学等または各種学校等に所属する指導員等 |
| 〇 | 〇 | 当該職業訓練の内容に直接関係する職種に係る職業訓練指導員免許を有する者 |
| 〇 | 〇 | 当該職業訓練の内容に直接関係する職種に係る1級の技能検定に合格した者 |
| 〇 | – | 当該職業訓練の科目・職種等の内容について専門的な知識もしくは技能を有する指 導員または講師(当該分野の職務にかかる指導員・講師経験が3年以上の者) |
| 〇 | 〇 | 当該職業訓練の科目・職種等の内容について専門的な知識もしくは技能を有する指 導員または講師(当該分野の職務にかかる実務経験⦅講師経験は含まない⦆が10年以上の者) |
| 〇 | 〇 | 当該課程により取得を目標とするITSSレベル3・4及びDSS-Pレベル3・4の資格取得者 |
外部の機関が提供する訓練コースを受ける事業外訓練の場合、以下の要件を満たした①特定の訓練機関と②民間の教育訓練機関のうちいずれかの機関による訓練を受ける必要があります。
①特定の訓練機関(クリックで詳細表示)
次に掲げる施設を運営している者であること
- 公共職業能力開発施設、職業能力開発総合大学校及び能開法第15条の7第1項ただし書に規定する職業訓練を行う施設、国又は自治体等から委託を受けて訓練を行う施設又は認定職業訓練を行う施設
- 学校教育法による大学等
- 各種学校等(学校教育法第124条の専修学校若しくは同法第134条の各種学校)
- 中小企業大学校
- 一般教育訓練等の講座指定を受けた訓練機関(一般教育訓練等の指定講座を行う場合に限る。)
②民間の教育訓練機関(クリックで詳細表示)
次の全てに該当する者であること
- 日本国内の法人であること
- 申請事業主以外の事業主又は事業主団体の設置する施設を運営するものであって、申請事業主又は事業主団体等から委託を受け、訓練等を提供する者であること
- 計画提出日までに定款、登記簿等において事業目的として教育訓練事業が記載されている法人であること
助成対象とならない訓練
OFF-JTの実施目的・実施方法が、それぞれ以下に該当するものである場合には、助成対象となりません。カリキュラム全体のうち一部に含まれる場合は、実訓練時間数の算定から除外して計算を行う必要があります。
■OFF-JTのうち助成対象とならない実施目的
| 実施目的 | 具体例 |
|---|---|
| 職務に直接関連しない訓練等 | 普通自動車(自動二輪車)運転免許の取得のための講習等 |
| 職業人として共通して必要となるもの | 接遇・マナー講習等社会人としての基礎的なスキルを習得するための講習等 |
| 趣味教養に関するもの | 日常会話程度の語学の習得のみを目的とする講習、話し方教室等 |
| 通常の事業活動に関するもの | コンサルタントによる経営改善指導、品質改善マニュアル作成、製品開発のための大学等での研究活動等 |
| 労働者の職業能力開発に直接関連しないもの | 講演会、研究会、座談会、学会、研究発表会、博覧会、見本市、ビジネス交流会等 |
| 法令等で実施が義務付けられたもの | 労働安全衛生法に基づく講習、道路交通法に基づき実施される法定講習等※資格を取得するための法定講習等は助成対象 |
| 知識・技能の習得を目的としないもの | 意識改革研修、モラール向上研修等 |
| 資格試験 | 講習を受講しなくても単独で受験して資格を得られるもの |
| 適性検査 | – |
■OFF-JTのうち助成対象とならない実施方法
- 労働者が自発的に行うもの(育児休業中の者に対する訓練等を除く)
- 教材、補助教材等を訓練受講者に提供することのみで設問回答、添削指導、質疑応答等が行われないもの
- 広く国民の職業必要な知識及び技能の習得を図ることを目的としたものではなく、
- 特定の事業主に対して提供することを目的としたもの
- 専らビデオのみを視聴して行う講座(eラーニングによる訓練等、通信制による訓練等及び定額制サービスによる訓練を除く)
- 生産ライン又は就労の場で行われるもの
- 通常の生産活動と区別できないもの (例:営業同行トレーニング等)
助成対象者
■助成対象となる事業主
人材開発助成金の受給対象は、以下の全ての要件を満たす事業主となります。
- 雇用保険適用事業所の事業主であること
- 労働組合等の意見を聴いて事業内職業訓練開発計画およびこれに基づく職業訓練実施計画を作成し、その計画の内容を労働者に周知していること
- 職業能力開発推進者を選任していること
- 従業員に職業訓練を受けさせる期間中も、賃金を適正に支払っていること(最低賃金以上の給与の支給、時間外手当の支給等)
- 助成金の審査に必要な書類を整備し、5年間保存すること
助成対象外となる事業主
ただし、計画届の提出日からさかのぼって1年以内に、人材開発支援助成金の「支給決定」を受けたことがあり、その支給対象者のうち「訓練期間中」「訓練終了日の翌日から6ヶ月以内」「支給申請書の提出日」のいずれかの期間内に、理由の如何を問わず離職した者の割合が50%以上であったことが2回以上行われている場合は、助成対象外となります。
■助成対象となる労働者
次の全ての要件を満たす労働者が訓練の受講対象者である必要があります。
- 助成金を受けようとする事業主の事業所において被保険者であり、訓練実施期間中において被保険者であること
- 職業訓練実施計画届時に提出した「対象労働者一覧」に記載のある被保険者であること
- 次の①~③のいずれかに該当すること
- ①通学制又は同時双方向型の通信訓練の場合
訓練の受講時間数が、実訓練時間数の8割以上であること - ②eラーニングによる訓練及び通信制による訓練等の場合
訓練実施期間中に訓練等を修了していること - ③定額制サービスによる訓練の場合
定額制サービスに含まれる教育訓練(職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練)を修了した者であり、その修了した訓練の合計時間数が1時間以上の者であること
- ①通学制又は同時双方向型の通信訓練の場合
助成対象経費
主な助成対象経費は以下の①事業内訓練に係る経費、②事業外訓練に係る経費、③その他経費となります。
①事業内訓練に係る費用
| 経費項目 | 詳細 |
|---|---|
| 部外講師の謝金・手当 | 所得税控除前の金額 ※1訓練コースにつき助成対象と認められた実訓練時間1時間当たり3万円を上限※謝金以外の日当は社内の支出規定がある場合のみ1日当たり上限3千円まで計上可 |
| 部外講師旅費 | 部外講師が訓練を実施するために勤務先又は自宅から会場までに要した経費 ※国内招聘の場合は5万円、海外からの招聘の場合は15万円が1実施計画当たりの上限 |
| 施設・設備の借上費 | 教室・実習室・ホテルの研修室等の会場借用料、マイク・OHP・ビデオ・スクリーンなど訓練で使用する備品の借料であって助成対象コースのみに使用したことが確認できるもの |
| 教科書・教材の購入・作成費 | 学科又は実技の訓練等を行う場合に必要な教科書・教材の購入又は作成費であり、助成対象コースのみで使用するもの ※教科書については、頒布を目的として発行される出版物が対象 |
| 訓練コースの開発費 | 事業主が大学、高等専門学校、専修学校等に職業訓練の訓練コース等を委託して開発させた場合に要した費用及び当該訓練コース等の受講に要した費用 |
助成対象とならない経費
以下に該当する経費については助成対象外となります。
- 外部講師の旅費・宿泊費のうち上限を超えるもの、車代(タクシー等)、食費
- 「経営指導料・経営協力料」等のコンサルタント料に相当するもの
- 繰り返し活用できる教材(パソコンソフトウェア、学習ビデオ等)
- 訓練等以外の生産ライン又は就労の場で汎用的に用い得るもの(パソコン及び周辺機器等)
- eラーニングによる訓練等又は通信制による訓練等に係る経費
②事業外訓練に係る経費
| 経費項目 | 詳細 |
|---|---|
| 入学料・受講料・教科書代 | 受講に際して必要となる入学料・受講料・教科書代(予め受講案内等で定められているものに限る) |
助成対象とならない経費
以下に該当する経費については助成対象外となります。
- 訓練等に直接要する経費以外のもの(例:受講生の旅費や宿泊費など)
③その他経費
| 経費項目 | 詳細 |
|---|---|
| 特定職業能力検定 | 特定職業能力検定を受けさせるために要した経費(受験料等) |
| キャリアコンサルティング | 職務に関連した訓練を実施するに当たってキャリアコンサルタントが実施するキャリアコンサルティングを受けさせるために要した経費 ※キャリアコンサルタントへの謝金に関しては、実訓練時間数に含められたキャリアコンサルティング実施時間数1時間当たり3万円が上限 |
| 資格・試験に関する受験料等 | ITスキル標準、公的職業資格、教育訓練給付指定講座分野・資格コード表に記載される資格・試験の資格試験 |
| 消費税 | – |
助成金受給までのスケジュール
■職業訓練実施計画届の提出
訓練開始日の6ヵ月前から1ヵ月前までの間に、以下のような提出書類を作成し、管轄労働局に提出します。
- 職業訓練実施計画書(指定様式)
- 訓練の対象労働者一覧(指定様式)
- 訓練内容を確認できるカリキュラム
■計画の実施
提出した職業訓練実施計画を実施し、支給申請の期限(訓練終了日の翌日から2ヶ月以内)までに、訓練にかかった経費全額の支払いを行います。
■支給申請書の提出
訓練終了日の翌日から2ヶ月以内に、以下のような提出書類を準備・作成し、管轄労働局に対して支給申請を行います。
- 支給申請書、賃金助成の内訳等助成額を算定した書類
- OFF-JT実施状況報告書(指定様式)
- 訓練期間中の労働条件がわかるもの(雇用契約書の写しなど)
- 事業主が訓練費用を負担したことを確認できる振込通知書
- 出勤簿、タイムカード、賃金台帳の写し
■助成金の支給
提出した支給申請内容をもとに支給審査が行われ、助成金の支給・不支給が決定され、支給対象となった事業者には助成金の支給が行われます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)は、DXやGXといった社会的要請に応える取組や、事業転換を行うための人材育成を検討されている企業にとって、非常に有効な選択肢となり得ます。
ただし、申請には十分な準備が求められるほか、訓練の内容や対象者に関する条件も多岐にわたるため、制度への深い理解と適切なマネジメントが欠かせません。
- 申請したいが何から取り掛かるべきか相談したい
- 申請のサポートを依頼したい
- 自社の訓練が助成対象となるか確認したい
株式会社G&Nでは社労士法人との提携を行っているため、こうしたご相談に対して丁寧かつ実践的なサポートを提供することが可能です。ご興味をお持ちの方は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。



