【最大600万円助成】令和7年度業務改善助成金の詳細を解説

【最大600万円助成】令和7年度業務改善助成金の詳細を解説

「業務改善助成金」は、中小企業・小規模事業者による事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)の引き上げを支援する制度です。賃金の引き上げ額や、賃金を引き上げる従業員数に応じて、設備投資や人材育成、経営コンサルティング等、様々な取組に対する助成を受けることが可能です。

本記事では、助成金の概要や対象者をはじめ、申請から受給までのスケジュール、賃上げに関する注意事項などを分かりやすく解説しています。

人材育成やシステム導入、業務効率化のための設備投資など、様々な用途に活用することができる制度ですので、この機会にぜひ内容をご覧ください。

助成金額・助成率

「業務改善助成金(以下、本助成金)」では、雇入れ後6ヵ月以上経過した労働者を対象に事業場内最低賃金の引上げを行ったうえで、生産性向上に資する設備投資等を行った事業者に対し、最大で600万円の助成金が支給されます。

■助成金額

助成上限金額は、「最低賃金の引き上げ額」「賃金を引き上げる労働者数」「事業場規模(事業所内で働く従業員数)」に応じて確定します。引き上げる金額や労働者数が大きくなるほど、助成上限金額も大きくなります。

コース区分事業場内最低賃金の
引き上げ額
引き上げる労働者数助成上限金額
(事業場規模30人以上の事業者)
助成上限金額
(事業場規模30人未満の事業者)
30円コース30円以上1人30万円60万円
2~3人50万円90万円
4~6人70万円100万円
7人以上100万円120万円
10人以上※120万円130万円
45円コース45円以上1人45万円80万円
2~3人70万円110万円
4~6人100万円140万円
7人以上150万円160万円
10人以上※180万円180万円
60円コース60円以上1人60万円110万円
2~3人90万円160万円
4~6人150万円190万円
7人以上230万円230万円
10人以上※300万円300万円
90円コース90円以上1人90万円170万円
2~3人150万円240万円
4~6人270万円290万円
7人以上450万円450万円
10人以上※600万円600万円

※「10人以上」の上限額区分に関しては、特例事業者が10人以上の労働者の賃金を引き上げた場合に適用されます。特例事業者については、助成対象者にて詳しく解説します。

業務改善助成金を活用する際は、「引上げ前の事業場内最低賃金」と「引上げ後の事業場内最低賃金」の間に位置する時給で働く労働者(=事業場内最低賃金に近い水準の時給で働く方)についても、同等水準の賃金引上げを行う必要があります。

たとえば、下図の「30円コースの事例」にあるように、コースごとに定められた額(この場合30円)分の最低賃金引上げを行う場合、引上げ後の新たな最低賃金を下回る時給の労働者がいると、その労働者についても、コースに準じた金額分の賃上げを実施しなければなりません。

ただし、賃上げの対象としてカウントされるのは、「引上げ前」と「引上げ後」の最低賃金の間に該当する労働者のみです。それ以外の労働者は対象外となるため、注意が必要です。

引き上げる金額・労働者数の考え方(30円コースの事例)

■助成率

助成率は、「引き上げ前の事業場内最低賃金額」に応じて確定します。

引き上げ前の事業場内最低賃金額助成率
1,000円未満4/5
1,000円以上3/4

助成対象者

主な助成対象者は、以下の①と②の両方を満たす中小企業・小規模事業者となります。
過去に業務改善助成金を活用した事業者も助成対象となりますが、同一事業場の申請は年度内1回までとなります。

①下表に示す業種区分に該当し、なおかつ「資本金額又は出資総額」「常時使用する労働者数」のいずれかを満たすもの

業種区分資本金額又は出資総額常時使用する労働者数
小売業(小売業、飲食店など)5,000万円以下50人以下
サービス業(物品賃貸業、宿泊業、医療、福祉、複合サービス事業など)5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他の業種(農業、林業、漁業、建設業、製造業、運輸業、金融業など)3億円以下300人以下

②事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること

地域別最低賃金は、国が毎年10月頃に改定する都道府県単位の最低賃金額であり、申請を行う事業場が所在する県の最低賃金額を基準として、事業場内最低賃金が+50円以内である必要があります。

ただし、上記を満たす場合でも以下のような事例に該当する場合には助成対象となりません。

①交付申請書の提出日の前日から起算して6月前の日から、実績報告手続を行った日の前日又は賃金引き上げから6月を経過した日のいずれか遅い日までの間に、以下のいずれかの事実が発覚した場合

  • 事業場の労働者を解雇した場合(天災事変等やむを得ない事由で事業継続が困難となった場合や労働者の責に帰すべき事由での解雇を除く。)
  • その者の非違によることなく勧奨を受けて労働者が退職した場合
  • 主として企業経営上の理由により退職を希望する労働者の募集によって労働者が退職した場合
  • 事業場の労働者の時間当たりの賃金額を引き下げた場合
  • 所定労働時間の短縮又は所定労働日の減少を内容とする労働契約変更によって、月当たりの賃金額を引き下げた場合(天災事変等やむを得ない事由で事業継続が困難となった場合や労働者の責に帰すべき事由での解雇を除く。)
  • 助成対象経費を対象として、国又は地方公共団体から補助金等の交付その他これに類する助成金等を受けている場合

②過去に業務改善助成金の交付を受けた事業場であり、当該助成事業完了日以後の労働者の賃金額が当該助成事業において定めた事業場内最低賃金額を下回る場合

③交付申請書の提出日の前日から起算して1年前の日から、実績報告手続を行った日の前日又は賃金引き上げから6月を経過した日のいずれか遅い日までの間に、労働関係法令に違反していることが明らかとなった場合(司法処分等)

④実績報告書の提出日から起算して過去3年以内に事業場の所在地の管轄都道府県労働局長から、補助金等の決定の取消・処分等を受けている場合   など

特例事業者

上記の要件を満たしたうえで、以下の「①賃金要件」又は「②物価高騰要件」のいずれか片方でも満たす場合は「特例事業者」に該当し、助成率・助成対象経費について、それぞれ特例的な拡充を受けることができます。

①賃金要件
事業場内最低賃金が1,000円未満である事業者
➡ 助成率4/5が適用されます。

②物価高騰要件
原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等の外的要因により、申請前3か月間のうち任意の1か月の利益率が、前年の同じ月と比べて3%ポイント以上低下していること
例:去年の9月の利益率が10%
   今年の9月の利益率が7%(3%ポイントの減少)
➡生産性向上に資する設備投資等のうち、以下の経費を助成対象経費とすることができます。
・定員7名以下又は車両本体価格200万円以下の乗用自動車や貨物自動車
・PC、スマホ、タブレット等の端末と周辺機器の新規導入

助成対象となる事業内容

助成対象となる事業内容は、助成対象事業場における「生産性向上に資する設備投資や経営コンサルティング等」であり、より具体的には以下のような取組が助成対象となります。

事業内容詳細

生産性向上に資する設備投資
※は「物価高騰要件」を満たす事業者のみ対象

・POSレジシステム導入による在庫管理の短縮
・リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
※定員7人以下又は車両本体価格200万円以下の乗用自動車や貨物自動車
※PC、スマホ、タブレット等の端末と周辺機器の新規導入  など

経営コンサルティング

国家資格者による、顧客回転率の向上を目的とした業務フロー見直しなど

その他

顧客管理情報のシステム化など

業務改善助成金の主な活用事例

助成対象経費

上記の助成対象となる事業を実施するために必要不可欠な、以下の経費が助成対象となります。

経費区分具体例
謝金専門家への謝金
※助成上限金額は、1回当たり10万円までとし、回数は5回までが上限となります。
旅費専門家や職員の旅費(外国旅費、日当、宿泊費を除く)
借損料器具機械や物品の借料および損料等の費用(会場借料を除く)
会議費会議のための会場借料、通信運搬費等の費用
雑役務費受講料等の費用(試作・実験費、造作費を除く)
印刷製本費研修資料やマニュアル等の作成費用
原材料費資材購入の費用
機械装置等購入費

機器・設備類(特殊用途自動車以外の自動車、パソコン⦅タブレット端末やスマートフォン及びその周辺機器を含む⦆は除く)の購入、製作又は改良の費用
※「物価高騰要件」に該当する場合は、乗車定員7人以上又は車両本体価格200万円以下の自動車、貨物自動車、特種用途自動車、
 及びパソコン(タブレット端末やスマートフォン及びその周辺機器を含む)の購入、製作又は改良の費用についても対象となります。

造作費機械装置据置等の費用
人材育成・教育訓練費

外部団体等が行う人材育成セミナー等の受講費(賃上げに限定的なものに限る)
※50万円が助成上限金額となります。

経営コンサルティング経費外部専門家やコンサルタント会社による経営コンサルティング費用(人員削減、労働条件の引下げを内容とするものは除く)
委託費調査会社、システム開発会社等への委託費用(就業規則の作成・改正及び賃金制度の整備は除く)

以下に該当する経費ついては、助成対象外となります。

  • 単なる経費削減を目的とした経費(LED電球への交換等)
  • 不快感の軽減や快適化を図ることを目的とした職場環境の改善経費(エアコン設置、執務室の拡大、内装工事等の改築費用、机・椅子の増設等)
  • 通常の事業活動に伴う経費(事務所借料、光熱費、従業員賃金、交際費、消耗品費、通信費、汎用事務機器購入費、広告宣伝費等)

助成金支給の流れ

業務改善助成金の申請~支給までの流れは下図の通りとなります。

業務改善助成金受給までの流れ

また、本助成金の申請期間、賃金引き上げ期間、事業完了期限はそれぞれ下表の通りとなっており、期間内に申請、賃金引上げ、設備投資等を完了する必要があります。

申請回申請期間賃金引き上げ期間事業完了期限
第1期令和7年4月14日~
令和7年6月13日
令和7年5月1日~
令和7年6月30日
令和8年1月31日
第2期令和7年6月14日~
地域別最低賃金改定日の前日(10月頃)
令和7年7月1日~
地域別最低賃金改定日の前日(10月頃)
令和8年1月31日

申請書の作成・提出

申請においては、以下の内容を盛り込んだ申請書を作成し、所轄の労働局への提出が必要です。

  • 業務改善計画(例:設備の導入など)
  • 賃金引き上げ計画(最低賃金の一定額以上の引き上げを含む)
    ※賃金引き上げの実施は、交付決定前についても対象とすることができます。
     ただし、賃金引き上げ計画の提出後に実施した賃上げであることが条件です。

審査・交付決定

提出した申請書の内容をもとに、事務局による審査が行われます(約3ヶ月目安)。
審査の結果、「交付決定」となった事業者には、事務局より通知書が送付されます。

計画の実施

交付決定となった日より事業開始が可能となり、申請した計画内容に沿って以下の取組を実施します。

  • 申請したコース区分の金額分の事業場内最低賃金引き上げ(賃金引き上げ期間内に完了すること)
  • 生産性向上に資する設備投資、経営コンサルティング等の実施(事業完了期限内に完了すること)
  • 助成対象経費の支払い(事業完了期限内に完了すること)

令和7年度の業務改善助成金の賃金引上げ期間は、令和7年7月1日~地域別最低賃金改定日の前日までとなっています。「賃金引き上げ計画」の提出後であれば、交付決定前の賃金引き上げも助成対象とすることが可能です。最低賃金の改定日は都道府県によって異なりますが、一般的に10月1日~10月中旬にかけて行われます。賃金引き上げをその前日までに完了していない場合、助成金の支給対象としてカウントされないため注意が必要です。

(例)10月1日に新しい地域別最低賃金(1,000円→1,050円)が発行される場合
発行日の前日(9月30日)までに事業場内最低賃金を1,005円→1,050円に引き上げ:助成対象
発行日の当日(10月1日)に事業場内最低賃金を1,005円→1,050円に引き上げ:助成対象外

実績報告書の作成・提出

事業完了後1か月以内または翌年度4月10日のいずれか早い日までに、以下の内容を記載した「事業実績報告書」及び「支給申請書」を作成し、労働局へ提出します。

・業務改善計画の実施結果
・経費の支払内容
・賃金引き上げの実施状況

助成金の受領

実績報告書をもとに、労働局が助成金額の審査・確定を行います。
その後、支給決定通知書が事業主に送付され、助成金が支払われます。

状況報告の実施

以下の①又は②のいずれか遅い日から起算して1月以内に、「状況報告(事務局指定様式)」の作成・提出を行う必要があります。
①賃金額を引き上げてから実績報告手続きを行った日の前日
②賃金額を引き上げてから6月を経過した日

また、助成事業完了日の属する年度の翌々年度6月30日までに、「消費税及び地方消費税に係る仕入控除税額報告書(事務局指定様式)」の作成・提出を行う必要があります(仕入控除税額が0円の場合を含む)。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
業務改善助成金は、企業の生産性向上や従業員の賃金引き上げを後押しする有効な制度です。
ただし、制度の活用には複数のステップや満たすべき要件があり、スムーズな申請には専門的な知識と十分な事前準備が必要です。

また、助成金の申請代行は、法律上「社会保険労務士(社労士)」の独占業務とされており、
申請を第三者に依頼する場合には、必ず社労士に依頼する必要があります。

G&Nでは、社労士法人と提携し、安心して申請をお任せいただける体制を整えているほか、
お客様ご自身で申請される場合のサポートも行っています。
ご興味をお持ちの方は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。

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