社員研修に使える!人材開発支援助成金(人材育成支援コース)とは?

社員研修に使える!人材開発支援助成金(人材育成支援コース)とは?

人手不足や業務の高度化が進むなかで、企業にとって「人材育成」は経営の重要テーマとなっています。
ただし、社員のスキルアップや外部研修の活用にはコストがかかるため、支援制度の活用が有効です。

厚生労働省が実施する「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)」は、事業主が雇用する労働者に対して、その職務に関連した専門的な地域や技能を習得させるための訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。外部研修の受講やOJTの実施など、幅広い人材育成訓練が対象となるため、多くの企業にとって活用しやすい内容となっています。

本記事では、人材育成支援コースの概要や助成金額、対象となる訓練内容、申請の流れまでをわかりやすく解説します。社員の育成や教育体制の見直しを検討されている方は、ぜひご活用の参考にしてください。

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)とは

人材開発支援助成金は、事業主が雇用する労働者に対して、その職務に関連した専門的な地域や技能を習得させるための訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。

下表は人材育成支援コースにおける訓練ごとの助成金額・助成率です。()内の金額やパーセンテージは、申請者が中小企業以外(大企業)の場合の数値となります。

どのような訓練を実施するかに応じて、対象となる労働者や助成金額・助成率は大きく異なります。
訓練の詳細については、次のセクションで詳しく解説します。

出典:厚生労働省 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)概要リーフレット「(1)助成率・助成額」
出典:厚生労働省 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)概要リーフレット「(1)助成率・助成額」

人材育成支援コースでは、1事業所当たりの1年度の助成限度額が1,000万円までとなっていることに加えて、受講者1人1訓練あたりの経費助成限度額について、以下の通り上限が設けられているため、注意が必要です。

出典:人材開発支援助成金(人材育成支援コース)概要リーフレット「(2)受講者1人1訓練当たりの経費助成限度額」
出典:人材開発支援助成金(人材育成支援コース)概要リーフレット「(2)受講者1人1訓練当たりの経費助成限度額」

助成対象となる訓練

人材育成支援コースでは、以下の①〜③のいずれかを満たす訓練が助成対象となります。

訓練内容詳細
①人材育成訓練 職務に関連した知識・技能を習得させるための10時間以上の訓練(OFF-JT)
②認定実習併用職業訓練厚生労働大臣の認定を受けた実習併用職業訓練(OFF-JT+OJT)
③有期実習型訓練正社員経験の少ない有期契約労働者を正社員等に転換するための訓練(OFF-JT+OJT)

また、訓練の実施方法は大きく分けて以下の4つがありますが、訓練の内容によっては助成対象とならない場合もあるため注意が必要です。

訓練実施方法詳細
①通学制教育訓練機関に通学し対面で訓練等を受講すること
②同時双方向型の通信訓練OFF-JT又はOJTにおいて、情報通信技術を活用した遠隔講習であって、一方的な講義ではなく現講義中に質疑応答が行えるなど、同時且つ双方向的(オンライン)に実施される形態のもの
③eラーニングコンピュータなど情報通信技術を活用した遠隔講習であって、訓練等の受講管理のためのシステム(LMS)等により、訓練等の進捗管理が行えるもの
④通信制通信の方法により一定の教育計画の下に、教材、補助教材を受講者に提供し、必要な指導者が。これに基づき、設問回答、添削指導、質疑応答等を行うもの

以降のセクションにて、訓練の詳細や満たすべき条件について説明します。

①人材育成訓練

主に以下のような要件を満たし、職務に関連した知識及び技能を習得させるための10時間以上の訓練(OFF-JT)を行う場合には、「人材育成訓練」として申請することが可能です。

■訓練の要件

  • 訓練の実施方法が「通学制」、「同時双方向型の通信訓練」、「eラーニング」又は「通信制」のいずれかであり、次のいずれかに該当すること
    • 1コースあたりの実訓練時間数が10時間以上であること
      (「通学制」「同時双方向型の通信訓練」の場合)
    • 1コースあたりの標準学習時間が10時間以上であること、又は1コースあたりの標準学習期間が1ヶ月以上であること
      (「eラーニング」「通信制」の場合)
  • 自社で企画・主催・運営を行う「事業内訓練」又は、外部の機関が提供する訓練コースを受ける「事業外訓練」のいずれかであること   など

■労働者の要件

  • 訓練を受ける労働者が以下のいずれかに該当すること
    • 訓練実施期間中において、被保険者であること
    • 従来から雇用されている、又は新たに雇用された有期契約労働者等で、訓練終了日又は支給申請日時点で被保険者であること
  • 訓練実施方法が「通学制」「同時双方向型の通信訓練」の場合、訓練等の受講時間数が、実訓練時間数の8割以上であること
  • 訓練実施方法が「eラーニング」「通信制」である場合、訓練実施期間中に訓練等を修了すること   など

②認定実習併用職業訓練

主に以下のような要件を満たし、新規学校卒業者を対象として、OFF-JTとOJTを組み合わせた訓練を6ヶ月〜2年かけて行う場合には、「認定実習併用職業訓練」として申請することが可能です。

■訓練の要件

  • 以下の4つの条件を満たし、大臣認定を受けた訓練であること
    • OFF-JTとOJTを効果的に組み合わせた訓練であること
    • 訓練実施期間が6ヶ月以上2年以下であること
    • 総訓練時間数が1年当たりの時間数換算で850時間以上であること
    • 総訓練時間数に占めるOJTの割合が2割以上8割以下であること
  • OFF-JTについては「通学制」「同時双方向型の通信訓練」であり、1コースの実訓練時間数が10時間以上であること
  • OJTについては、原則として対面で行うこと   など

■労働者の要件

  • 訓練実施期間中において、訓練を受ける労働者が被保険者であること
  • OFF-JT・OJTを受講した時間数がOFF-JT・OJT実訓練時間数の8割以上であること
  • 訓練開始日において、15歳以上45歳未満の労働者であること   など

③有期実習型訓練

主に以下のような要件を満たし、正社員経験の少ない有期契約労働者を正社員に転換させるために、OFF-JTとOJTを組み合わせた訓練を2ヶ月以上行う場合には、「有期実習型訓練」として申請することが可能です。

■訓練の要件

  • 総訓練時間数が6ヶ月当たりの時間数換算で425時間以上であること
  • 総訓練時間数に占めるOJTの割合が1割以上9割以下であること
  • OFF-JTについては、「通学制」「同時双方向型の通信訓練」であり、1コースの実訓練時間数が10時間以上であること
  • OJTについては、原則として対面で行うこと   など

■労働者の要件

  • 訓練実施期間中において、訓練を受ける有期契約労働者が被保険者であること
  • OFF-JT・OJTを受講した時間数がOFF-JT・OJT実訓練時間数の8割以上であること
  • キャリアコンサルタント等により、職業能力形成機会に恵まれなかった者として参加が認められ、ジョブ・カード(指定様式)を作成していること
  • 正規雇用労働者等として雇用することを約して雇い入れられていないこと   など

助成対象とならない訓練

OFF-JTの実施目的・実施方法が、それぞれ以下に該当するものである場合には、助成対象となりません。カリキュラム全体のうち一部に含まれる場合は、実訓練時間数の算定から除外して計算を行う必要があります。

■OFF-JTのうち助成対象とならない実施目的

実施目的具体例
職務に直接関連しない訓練等普通自動車(自動二輪車)運転免許の取得のための講習等
職業人として共通して必要となるもの接遇・マナー講習等社会人としての基礎的なスキルを習得するための講習等
趣味教養に関するもの日常会話程度の語学の習得のみを目的とする講習、話し方教室等
通常の事業活動に関するものコンサルタントによる経営改善指導、品質改善マニュアル作成、製品開発のための大学等での研究活動等
労働者の職業能力開発に直接関連しないもの講演会、研究会、座談会、学会、研究発表会、博覧会、見本市、ビジネス交流会等
法令等で実施が義務付けられたもの労働安全衛生法に基づく講習、道路交通法に基づき実施される法定講習等※資格を取得するための法定講習等は助成対象
知識・技能の習得を目的としないもの意識改革研修、モラール向上研修等
資格試験講習を受講しなくても単独で受験して資格を得られるもの
適性検査

■OFF-JTのうち助成対象とならない実施方法

  • 労働者が自発的に行うもの(育児休業中の者に対する訓練等を除く)
  • 教材、補助教材等を訓練受講者に提供することのみで設問回答、添削指導、質疑応答等が行われないもの
  • 広く国民の職業必要な知識及び技能の習得を図ることを目的としたものではなく、
  • 特定の事業主に対して提供することを目的としたもの
  • 専らビデオのみを視聴して行う講座(eラーニングによる訓練等、通信制による訓練等及び定額制サービスによる訓練を除く)
  • 生産ライン又は就労の場で行われるもの
  • 通常の生産活動と区別できないもの (例:営業同行トレーニング等)

助成対象者

人材開発助成金の受給対象は、以下の「事業主」「事業主団体」となります。

事業主(クリックで詳細表示)

申請を行う事業主は、主に以下の要件を全て満たす者となります。

  • 雇用保険適用事業所の事業主であること
  • 労働保険料を納入している事業主であること
  • 従業員に職業訓練を受けさせる期間中も、賃金を適正に支払っていること(最低賃金以上の給与の支給、時間外手当の支給等)
  • 助成金の審査に必要な書類を整備し、5年間保存すること
  • その他労働諸法令に則した事業運営を行っていること   など

なお、複数の事業主が共同で申請することが可能であり、その場合には共同する全ての事業主の合意に基づく協定書等(代表事業主名、共同事業主名、職業訓練等に要する全ての経費の負担に関する事項、有効期間、協定年月日を定めたもの)を締結する必要があります。

事業主団体(クリックで詳細表示)

雇用保険適用事業所であり、なおかつ以下のいずれかに該当することが条件です。

  • 事業協同組合、事業協同小組合
  • 信用協同組合
  • 協同組合連合会
  • 企業組合
  • 協業組合
  • 商工組合、商工組合連合会
  • 都道府県中小企業団体中央会
  • 全国中小企業団体中央会
  • 商店街振興組合、商店街振興組合連合会
  • 商工会、商工会議所
  • 一般社団法人、一般財団法人
  • 上記以外の事業主団体であって、次のいずれかに該当する団体
    • 団体の目的、組織、運営、事業内容を明らかにする規約、規則等を有する団体であること
    • 代表者が置かれているほか、事務局の組織が整備されていること

ただし、以下に該当する事業主、事業主団体である場合には、助成金の支給対象となりませんので、注意が必要です。

  • 基準期間(職業訓練実施計画の提出日の前日から起算して6ヶ月前の日から支給申請日の提出日までの間)に、当該計画を実施した事業所において、雇用する被保険者を解雇等事業主都合により離職させている
  • 基準期間に、離職理由のうち「解雇等による離職」「退職勧奨の他、事業縮小や賃金大幅低下等による正当理由自己都合離職等」によって離職した者のうち、特定受給資格者して認められた者の数を、事業所における至急申請書提出日時点での被保険者数で除した割合が6%を超えている
  • 計画届の提出日からさかのぼって1年以内に、人材開発支援助成金の「支給決定」を受けたことがあり、その支給対象者のうち「訓練期間中」「訓練終了日の翌日から6ヶ月以内」「支給申請書の提出日」のいずれかの期間内に、理由の如何を問わず離職した者の割合が50%以上であったことが2回以上行われている

助成対象経費

主な助成対象経費は以下の①事業内訓練に係る経費、②事業外訓練に係る経費、③その他経費となります。

①事業内訓練に係る経費

経費項目詳細
部外講師の謝金・手当所得税控除前の金額
※1訓練コースにつき助成対象と認められた実訓練時間1時間当たり1万5千円を上限
※謝金以外の日当は社内の支出規定がある場合のみ1日当たり上限3千円まで計上可
部外講師旅費部外講師が訓練を実施するために勤務先又は自宅から会場までに要した経費
※国内招聘の場合は5万円、海外からの招聘の場合は15万円が1実施計画当たりの上限
施設・設備の借上費教室・実習室・ホテルの研修室等の会場借用料、マイク・OHP・ビデオ・スクリーンなど訓練で使用する備品の借料であって助成対象コースのみに使用したことが確認できるもの
教科書・教材の購入・作成費学科又は実技の訓練等を行う場合に必要な教科書・教材の購入又は作成費であり、助成対象コースのみで使用するもの
※教科書については、頒布を目的として発行される出版物が対象
訓練コースの開発費事業主が大学、高等専門学校、専修学校等に職業訓練の訓練コース等を委託して開発させた場合に要した費用及び当該訓練コース等の受講に要した費用

以下に該当する経費については助成対象外となります。

  • 外部講師の旅費・宿泊費のうち上限を超えるもの、車代(タクシー等)、食費
  • 「経営指導料・経営協力料」等のコンサルタント料に相当するもの
  • 繰り返し活用できる教材(パソコンソフトウェア、学習ビデオ等)
  • 訓練等以外の生産ライン又は就労の場で汎用的に用い得るもの(パソコン及び周辺機器等)
  • eラーニングによる訓練等又は通信制による訓練等に係る経費

②事業外訓練に係る経費

経費項目詳細
入学料・受講料・教科書代受講に際して必要となる入学料・受講料・教科書代(予め受講案内等で定められているものに限る)

以下に該当する経費については助成対象外となります。

  • 訓練等に直接要する経費以外のもの(例:受講生の旅費や宿泊費など)

③その他経費

経費項目詳細
特定職業能力検定特定職業能力検定を受けさせるために要した経費(受験料等)
キャリアコンサルティング職務に関連した訓練を実施するに当たってキャリアコンサルタントが実施するキャリアコンサルティングを受けさせるために要した経費
※キャリアコンサルタントへの謝金に関しては、実訓練時間数に含められたキャリアコンサルティング実施時間数1時間当たり3万円が上限
消費税

助成金受給までのスケジュール

下図は、人材育成支援コースにおける助成金受給までの流れを示したものです。
受給までには様々な書類準備や提出作業が必要となります。以降にて詳しく解説します。

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の助成金受給までの流れ
人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の助成金受給までの流れ

■職業訓練実施計画届の提出

訓練開始日の6ヵ月前から1ヵ月前までの間に、以下のような提出書類を作成し、管轄労働局に提出します。

  • 職業訓練実施計画書(指定様式)
  • 訓練の対象労働者一覧(指定様式)
  • 訓練内容を確認できるカリキュラム

■計画の実施

提出した職業訓練実施計画を実施し、支給申請の期限(訓練終了日の翌日から2ヶ月以内)までに、訓練にかかった経費全額の支払いを行います。

■支給申請書の提出

訓練終了日の翌日から2ヶ月以内に、以下のような提出書類を準備・作成し、管轄労働局に対して支給申請を行います。

※「有期実習型訓練」の場合は、支給申請日までに訓練を受けた有期契約労働者を正社員に転換する必要があるため注意が必要です。

  • 支給申請書、賃金助成の内訳等助成額を算定した書類
  • OFF-JT実施状況報告書(指定様式)
  • 訓練期間中の労働条件がわかるもの(雇用契約書の写しなど)
  • 事業主が訓練費用を負担したことを確認できる振込通知書
  • 出勤簿、タイムカード、賃金台帳の写し 

■助成金の支給

提出した支給申請内容をもとに支給審査が行われ、助成金の支給・不支給が決定され、支給対象となった事業者には助成金の支給が行われます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)は、労働者の能力開発・教育訓練に対して幅広く活用可能な、最も汎用性の高い申請コースとなっています。

ただし、申請には様々な準備が必要となるだけでなく、訓練内容や訓練の対象者は多くの条件があるため、制度理解や適切なマネジメントが必要不可欠です。

  • 申請したいが何から取り掛かるべきか相談したい
  • 申請のサポートを依頼したい
  • 自社の訓練が助成対象となるか確認したい

株式会社G&Nでは社労士法人との提携を行っているため、こうしたご相談に対して丁寧かつ実践的なサポートを提供することが可能です。ご興味をお持ちの方は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。

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