2025.08.07
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業費補助金|補助額・申請のポイントを解説

近年、「リスキリング(学び直し)」という言葉がビジネスの現場で急速に広がりを見せています。デジタル技術の進展や産業構造の転換、人手不足の深刻化といった背景の中で、働く人のスキルを時代に合わせて更新し、成長分野へと導くことが、企業・個人の双方にとって重要な課題となっています。
こうした流れを受けて、経済産業省が実施しているのが「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」です。
この制度は、在職中の労働者がキャリア相談を通じて自身のスキルや志向を見直し、民間の研修講座などを通じて新たな専門性を習得し、転職やキャリアアップへとつなげていく取組を支援する制度です。
本記事では、制度の目的や補助内容、申請要件、対象事業のイメージなどをわかりやすく解説します。今後研修を提供していきたいとお考えの事業者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業とは
「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業(以下、本補助金)」は、リスキリングと労働移動の円滑化を一体的に進める観点から、在職者が自らのキャリアについて民間の専門家に相談できる「①キャリア相談対応」、それを踏まえてリスキリング講座を受講できる「②リスキリング提供」、それらを踏まえた「③転職支援」「④フォローアップ」までを一体的に実施する体制整備を支援する制度です。
なお、本補助金では、①キャリア相談対応から④フォローアップまでを一体的に支援する体制構築が難しい場合でも、リスキリング講座を提供する事業者との連携によってコンソーシアム形式での申請を行うことが可能です。ただし、講座の提供主体によってコンソーシアム申請の有無は異なりますので、注意が必要です。
■単独で申請できるケース
①キャリア相談対応からフォローアップまでを自社で一気通貫で実施する場合
②リスキリング講座の教材購入等、業務の一部のみを外部の事業者に委託し、講座の提供主体は自社である場合
■コンソーシアム形式での申請が必要なケース
連携する外部の事業者が、在職者に対して直接リスキリング講座、転職支援等を提供する場合
補助金額・補助率
本補助金の第六次公募における補助金額・補助率は下表の通りとなっています。
■補助金額・補助率
| 経費項目 | 補助金額 | 補助率 |
|---|---|---|
| ①人件費 | ①~③の合計で支援人数1人当たり10万円以内 ※ただし、②謝金に関しては、1時間当たり5,000円、支援開始人数1人当たり最大8時間が上限 | 1/3以内(※1) |
| ②謝金 | 1/3以内(※1) | |
| ③補助員人件費 | 1/2以内 | |
| ④広告費 | 集客目標人数1人当たり1.8万円以内 | 1/2以内 |
| ⑤システム構築・運営費 | 集客目標人数に応じて、以下の数値以内 72万円(99人以内) 150万円(100人~499人) 360万円(500人~999人) 720万円(1,000人~4,999人) 2,200万円(5,000人~9,999人) 3,600万円(10,000人~19,999人) 5,000万円(20,000人以上) | 1/2以内 |
| ⑥その他経費 | 支援開始人数1人当たり7,200円以内 | 1/2以内 |
| ⑦リスキリング経費 (個人がリスキリングのための 講座等を受講する際の 費用の負担軽減費用 | ・リスキリング講座提供価格の1/2相当額(講座受講修了人数1人当たり40万円まで) ・追加的な講座提供価格の1/5相当額(講座受講修了人数1人当たり16万円まで) | 定額(※2) |
※1 支援を受けた個人が実際に転職し、その後1年間継続的に転職先に就業していること、かつ、転職前と比較して賃金上昇していることが確認できる場合には、追加的に1/5が補助されます。
※2 補助を受けた額以上に個人の負担が軽減されることを前提に、個人に対するリスキリングのための講座等提供価格の1/2相当額が定額で補助され、更に支援を受けた個人が実際に転職し、その後1年間継続的に転職先に就業していることを確認できる場合には、追加的に1/5相当額を定額で補助されます。
補助対象経費に関する注意事項
本補助金では、「交付決定日以降、補助事業実施期間内に支払われた補助対象経費」に対して補助金が交付されます。そのため、採択発表や交付決定より前に契約・発注・支払済の経費は、補助対象外となりますのでご注意ください。
補助金の支払額算出に利用する人数の定義
本補助金では、交付される補助金額が、以下のような事業成果に応じて大きく変動します。
- 集客目標として設定した来場・申込者数(集客人数)
- 実際に支援を提供した人数(リスキリング講座の受講者数、転職支援の開始人数・講座修了人数)
- 転職が完了した人数(転職完了人数)
補助金額の算出に用いられる各人数の定義や、算定対象となる経費の詳細については、以下の図をご参照ください。
なお、弊社ではこれらの条件に基づいた補助金額の試算も承っております。制度の活用をご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
補助対象者
補助対象となる事業者は、主に以下の全ての要件を満たしている事業者となります。
- 国内に事業実施場所を有している法人、個人又は教育機関である(地方公共団体を除く)
- 経済産業省から補助金交付等停止措置・指名停止措置を受けていない
- 申請時に、過去5年間に職業安定法又は労働者派遣法の規定又はこれらの規定に基づく命令・処分に違反していない(是正指導を受けた後、交付決定時までに是正完了している場合を除く)
- 補助金・助成金において不正受給や融通、他の用途での使用等といった違反がないこと
- 贈賄や談合、競売等妨害の容疑で逮捕・起訴等されていないこと
- 独占禁止法、不正競争防止法に反する行為を行っていないこと
- 暴力団員等との関連性がないこと など
補助事業の要件
本補助金では、①キャリア相談、②リスキリング提供、③転職支援、④フォローアップのそれぞれにおいて、以下の要件を満たす必要があります。
①キャリア相談対応の要件
以下の全ての要件を満たすキャリア相談が可能な体制を構築した上で、個人に対する相談対応を実施すること
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 相談内容 | ・これまでのキャリアの棚卸し ・本支援を通じて目指すキャリアゴールの設定 ・スキルの棚卸し ・リスキリング講座の検討 ・リスキリング講座の受講進捗・修了確認 |
| 相談形式 | キャリア相談対応段階と転職支援段階で合わせて最低でも2回以上(1回当たり30分以上)、 支援を受ける個人と直接対話する面談形式でキャリア相談を行うこと(対面かオンラインどちらでも可) ※軽微な相談に留まる場合等は、メールやチャット等の文面でのコミュニケーションも可能 |
| 相談体制 | キャリア相談の従事者 →キャリアコンサルタント資格、または2年以上のキャリア相談対応の実務経験を有している者 キャリア相談の従事者を束ねる管理責任者 ※従事者15名につき管理責任者を1名配置すること |
| 相談目的 | 雇用主の変更を伴う転職を目指したキャリア相談であること 例:他企業の正社員への転職、他企業のパート・アルバイトへの転職、派遣先での正社員化 |
②リスキリング提供の要件
以下の全ての要件を満たすリスキリング講座を提供すること
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 講座内容 | 職業との関連が明確な学びであると見込まれること (趣味や教養の取得が目的である場合は補助対象外) |
| 講座期間 | 受講期間が個人への支援期間(2027年3月31日)を超えないこと |
| 講座時間 | 受講時間が15時間以上であること (ただし、内容の要件を満たした上で、 一般的に15時間未満の受講時間で取得可能な資格取得を目的としたものは補助対象) |
| 講座形式 | 本事業を経由しない場合でも、 同等のリスキリング講座を同価格(個人の自己負担軽減前の定価)で受けることができるものであること ※リスキリング講座を補助事業内で無料で提供することは妨げない |
| 講座体制 | 個人が転職先における入社日までにリスキリング講座の受講を修了した場合 更に、支援を受けた個人が実際に転職し、その後1年間継続的に転職先に就業できていることを確認できる場合 |
③転職支援の要件
以下の全ての要件を満たす転職支援であること
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 支援内容 | 転職準備支援、職業紹介を実施すること |
| 支援主体 | 職業安定法第30条第1項の許可又は第33条第1項の許可を受けている企業等が実施すること |
| 支援形式 | キャリア相談対応段階と転職支援段階で合わせて2回以上(1回当たり30分以上)の直接対話する形式での面談を実施すること |
④フォローアップの要件
追加補助を受ける場合には、以下の2点について個人に対して確認するためのフォローアップを行うこと
Ⓐ転職を完了した日から1年間、転職先において継続的に就業していること
Ⓑ転職を完了した日から1年が経過した後に、転職前と比べて賃金が上昇していること
補助対象経費
本補助金に係る補助対象経費は下表の通りとなります。
| 経費項目 | 詳細 |
|---|---|
| ①人件費 | キャリア相談、転職支援、求人開拓等に係る人件費(補助事業のみに要するものに限る) |
| ②謝金 | 外部の専門家がキャリア相談を行う場合の謝金 |
| ③補助員人件費 | 補助事業を行うために必要となるバックオフィス業務(進捗管理、証憑管理等)を行う派遣社員を追加的に雇用する場合の人件費 |
| ④広告費 | 広告宣伝の外注を行う場合にのみ補助対象となり、社内印刷費等は対象外 |
| ⑤システム構築・運搬費 | ウェブサイト構築、個人の管理のためのシステム等の構築・運用に係る経費 |
| ⑥その他経費 | 補助事業のために使用されることが特定・確認できるものであって、他のいずれの区分にも属さない備品費、設備費、通信運搬費等 |
| ⑦リスキリング経費 | 個人がリスキリングのための講座等を受講する際の費用の負担軽減費用 |
補助対象外となる経費
ただし、以下に該当する経費については補助対象外となります。
- 金融機関等への振込手数料(発注先負担で取引価格の内数の場合や、リスキリング経費相当の場合は補助対象)、代引手数料、インターネットショッピング決済手数料等
- 公租公課(消費税等)
- 各種保証・保険料
- 借入金等の支払利息および遅延損害金
- 商品券、金券等の購入費
- リスキリング講座の受講費用のうち、講座価格が不当に引き下げられている場合
- リスキリング講座の提供価格に、汎用性が高く目的外使用となり得るものの購入費用、その他不適当と考えられる費用が含まれている場合
補助事業のスケジュール
申請
本補助金の第六次公募の申請受付開始日は2025年8月4日(月)から開始されています。
申請締切の9月16日(火) 正午までに、以下の準備・申請作業をすべて完了させる必要があります。
- GbizIDプライムの取得
- 申請書類の作成
- リスキリング講座の内容や実施方法等に関する書類作成
- キャリア相談、転職支援の実施方法、体制に関する書類作成
加点項目について
申請時には上記の書類等に加えて、下記の認定等を取得・公表している場合には、後述する審査にて優遇措置を受けられる加点項目の申請が可能です。
・えるぼし認定
・女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画
・くるみん認定・プラチナ認定
・ユースエール認定
審査
提出された事業計画書やリスキリング講座の内容、添付書類(決算書、見積書、労働者名簿など)に基づいて、要件を満たしているかどうかに加えて、転職先の産業・企業や在職者の課題やニーズに沿った取組となっているかどうか等が総合的に審査されます。
交付申請
2025年11月を目安に採択発表があることが見込まれます。採択を受けた事業者は、原則として2025年12月中に、以下の準備を行い交付申請手続きをする必要があります。
- 採択後に行われる説明会に参加
- 見積書と相見積書等の取得
- 交付申請書類の作成
事業実施期間
交付申請を行い、申請内容に問題がなければ交付決定が通知され、2028年3月31日までが補助事業実施期間となります。(個人への支援は2027年3月31日までに完了する必要があります)
補助事業実施期間の最終日までに、補助事業の発注、納品、検収、支払に加えて、後述する報告作業も全て完了する必要があります。
また、事業期間中において、事務局が必要に応じて経費処理手順や社内統制の体制等を確認する「中間検査」が実施されることがあります。
概算払請求
事業に充てられる自己資金の状況によっては、事業完了前における概算払請求が認められるケースがあります。概算払請求を行う場合には、以下の準備・提出を行う必要があります。
- 概算払請求書の作成
- 交付決定後から概算払請求までに発生した全ての経費に関する証憑のとりまとめ
実績報告
補助事業完了後、その日から起算して90日以内に以下の実績報告書類の準備・提出を行う必要があります。
- 発注書、納品書、検収書、請求書等の契約・支払の証憑準備
- 補助事業で発生した全ての経費に関する証憑の取りまとめ
- 実績報告書の作成
実績報告の注意事項
期限までに実績報告書が提出されなかった場合、交付決定が取り消され補助金の受給が出来なくなります。
また、提出した実績報告書の内容をもとに、事務局による確定検査が行われます。検査で当該事業の成果が確認できない場合や、事業計画と異なる場合、検査を拒否する場合は、補助金返還や交付決定取り消しの可能性があるため注意が必要です。
状況報告
補助金の受給後も、補助事業の完了した日の属する国の会計年度の終了後、補助事業に係る事業継続等状況について報告を行う必要があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業費補助金」は、特に転職支援やリスキリング講座を提供する事業者にとって、手厚い補助が受けられる制度となっており、有効な選択肢であると言えます。
ただし、本補助金を活用するには、相談体制や支援体制の整備や、集客目標人数の設定など、様々な準備が必要です。
・申請したいが何から取り掛かるべきか相談したい
・申請のサポートを依頼したい
・自社の事業が対象となるか確認したい
株式会社G&Nでは、こうしたご相談に対して丁寧かつ実践的なサポートを行っております。ご興味をお持ちの方は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。




