事業承継に伴う経営資源引継ぎを支援|事業承継・M&A補助金「事業承継促進枠」

事業承継に伴う経営資源引継ぎを支援|事業承継・M&A補助金「事業承継促進枠」

事業承継・M&A補助金は、中小企業者及び個人事業主が事業承継又はM&Aに際して行う設備投資等や事業承継、事業再編及び事業統合に伴う経営資源の引継ぎ、引継ぎ後の経営統合に係る事業に係る経費の一部を支援する補助金です。

本補助金には大きく分けて4つの申請枠があり、それぞれ補助対象となる事業が異なります。
本記事では、「事業承継促進枠」について紹介します。

申請枠詳細
事業承継促進枠親族や従業員などへの事業承継を契機に、引き継ぐ経営資源を活用した設備投資等の取組を支援
専門家活用枠後継者不在や経営力強化を背景とした事業再編・事業統合等の経営資源引継ぎ(M&A)に向けた専門家活用を支援
廃業・再チャレンジ枠M&Aで譲渡できなかった既存事業を廃業し、地域の新たな需要創出や雇用創出につながる新たな挑戦を支援
PMI推進枠M&A成立後に行われる事業再編・事業統合等の取組(PMI)に際して行う専門家活用や設備投資等の取組を支援

事業承継促進枠は、親族内承継や従業員承継等の事業承継を契機として経営や事業を引き継ぐ予定である中小企業及び個人事業主が、引き継ぐ予定である経営資源を活用するための設備投資等に係る取り組みを行う際の費用の一部を補助する申請枠であり、中小企業者等の生産性を向上させることを目的としています。

出典:事業承継・M&A補助金 事業承継促進枠 パンフレット「事業承継促進枠とは」
出典:事業承継・M&A補助金 事業承継促進枠 パンフレット「事業承継促進枠とは」

補助金額・補助率

■補助金額

条件(※)補助上限金額
賃上げを実施する場合1,000万円
賃上げを実施しない場合800万円

※補助事業期間終了時に、公募申請時と比較し事業場内最低賃金+50円以上となる賃上げを達成できる場合には、補助上限金額を1,000万円に引き上げることができます。

「事業承継促進枠」では、「廃業・再チャレンジ枠」との併用申請を行うことが可能であり、事業承継に伴い廃業する事業に係る経費(廃業費)を補助対象経費とすることができます。

併用申請を行う場合には、通常の補助上限金額に最大150万円まで廃業費を上乗せすることが可能です。

■補助率

補助対象者補助金額800万円未満補助金額800万円超~1,000万円相当部分
小規模事業者2/3以内1/2以内
中小企業等1/2以内1/2以内

補助対象者

以下の「中小企業者等」「小規模事業者」が補助対象となります。

■中小企業者等

下表の資本金額又は出資総額、常時使用する従業員数のいずれかの条件を満たす会社及び個人事業主であること

業種分類資本金額又は出資総額常時使用する従業員数
製造業、その他(下記以外)(※)3億円以下300人以下
ゴム製品製造業(一部を除く)3億円以下900人以下
卸売業1億円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業(ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業を除く)5,000万円以下100人以下
ソフトウェア業・情報処理サービス業3億円以下300人以下
旅館業5,000万円200人以下

(※)資本金又は従業員の条件を満たしていれば、医者(個人開業医)、農家(会社法上の会社又は有限会社である農事法人、個人農家)についても補助対象となります。

ただし、以下に該当する中小企業者等は補助対象となりません。

  • 資本金又は出資金が5億円以上の法人に直接又は間接に100%の株式を保有される法人
  • 申請時において、確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者等
  • みなし大企業、みなし同一法人に該当する中小企業者等
  • 社会福祉法人、医療法人、社団法人(一般・公益)、財団法人(一般・公益)、学校法人、農事組合法人等

■小規模事業者

下表の常時使用する従業員数の条件を満たす会社及び個人事業主

業種分類常時使用する従業員数
製造業、その他(下記以外)20人以下
商業(卸売業・小売業)・サービス業5人以下
サービス業のうち宿泊業・娯楽業20人以下

補助対象となる事業承継

本補助金の対象となるのは、「承継予定者」「事業承継内容」「事業承継形態」のそれぞれの要件をすべて満たし、事業を引き継ぐ側(承継予定者)と引き継がせる側(被承継者)との間で事業承継を実施する予定がある場合です。

また、第13次公募における事業承継の対象期間は、公募申請受付終了日(2025年11月28日)から5年後の2030年11月27日までとなっています。したがって、計画している事業承継はこの期間内に実施される必要があります。

事業承継・M&A補助金 事業承継促進枠「承継予定者・事業承継内容・事業承継形態」

以下に該当する場合には、補助対象外の事業承継となります。

  • 承継者と被承継者による実質的な事業承継が行われていない場合
    例:代表者交代のみの事業承継、承継予定者の要件を満たさない者への事業承継
  • 経営権と所有権(株式、持分等)のいずれもの移転を伴わない代表者交代
  • グループ内の事業再編
  • 物品・不動産等のみを保有する事業の承継
  • フランチャイズ契約、又は実質的にはフランチャイズ契約であるとみなされる場合
  • 従業員等へののれん分け、又は実質的にのれん分けとみなされる場合
  • 休眠会社や、事業の実態がない状態の会社における代表者交代等
  • 設立間もない法人における代表者交代又は開業直後の事業主からの事業譲渡等において、その正当性が確認できない場合
  • 合同会社の社員間における代表社員交代において、事業を承継するための経営者交代とみなされない場合
  • その他、事業承継が行われたことを客観的に確認できない場合

ホールディングス承継(HD承継)について

法人における代表者交代において、被承継者等から譲り受ける株式を、承継予定者個人ではなく、承継予定者が所有する法人が取得する場合(HD承継)は、以下に該当する場合に限り、要件を満たします。

<承継前の条件>

  • 承継予定者及びHD会社の所有する、申請者法人株式が過半数を超えていないこと(20%未満が望ましい)
  • 承継予定者が、HD会社の株式の2/3超を保有していること
  • 被承継者が、HD会社の株式を所有していないこと

<承継後の条件>

  • 承継予定者が、HD会社の株式の2/3超を保有していること
  • 被承継者が、HD会社の株式を所有していないこと
  • HD会社が、申請者法人の株式を100%取得、保有していること
出典:事業承継・M&A補助金 事業承継促進枠 第13次公募要領「所有権の引継ぎに係る例外としてのHD承継」
出典:事業承継・M&A補助金 事業承継促進枠 第13次公募要領「所有権の引継ぎに係る例外としてのHD承継」

補助対象事業の要件

事業承継対象期間(2025年11月28日~2030年11月27日)中に実施予定の事業承継に際して、承継予定者を中心に実施される生産性向上等に係る取組が、本補助金における補助対象となります。具体的には、以下の要件を全て満たす取り組みが対象です。

①以下の全てを満たす、引き継ぐ経営資源を活用して起こ根う生産性向上等に係る取組であること

  • 承継予定者が主導して取り組む事業であること
  • 承継予定の中小企業者等における事業であること
    事業計画期間(5年)において当法人又は事業の存続を前提とすること
  • 承継予定である中小企業者等の経営資源を有効活用した事業であること

②補助事業期間を含む5年間の補助事業計画において、以下の生産性向上要件を達成する計画を立案し、達成に向けて事業に取り組むこと

  • 「付加価値額」または「1人当たりの付加価値額」の伸び率が年平均3%以上の向上となること

③補助対象事業が、以下のいずれにも合致しないこと

  • 公序良俗に反する事業
  • 風俗営業等、公的資金の使途として社会通念上、不適切と判断される事業
  • 国や独立行政法人等の他の補助金・助成金を活用しており、当該制度と類似の事業内容、公的医療保険・介護保険等からの報酬、固定価格買取制度等との重複がある事業

申請予定の事業内容が「国や独立行政法人等の他の補助金・助成金」との重複可能性がある場合は、当該事業内容が重複に相当しない旨を明確に記述の上、その根拠を疎明する必要があります。

(重複に相当しない根拠例)

  • 指定保険医療機関・保険薬局等に該当しないことを明示する
  • 補助対象事業は、従来の報酬事業等を営む事業所とは別の事業所において、設備機器等を完全に分離した上で実施する   など

補助対象経費

以下に該当し、補助対象事業を実施するために必要不可欠な経費が補助対象となります。

経費区分概要
設備費国内の店舗・事務所等の工事、国内で使用する機械器具等調達費用
産業財産権等関連経費補助対象事業実施における特許権等取得に要する要する弁護士費用
謝金補助対象事業実施のために依頼した専門家に支払う経費
旅費販路開拓等を目的とした国内外出張に係る交通費、宿泊費
外注費業務の一部を第三者に外注(請負)するために支払われる経費
委託費業務の一部を第三者に外注(委託)するために支払われる経費

また、「廃業・再チャレンジ枠」との併用申請を実施する場合には、補助金額150万円を上限として、以下の廃業関連経費を補助対象経費に含めることができます。

経費区分概要
廃業支援費廃業に関する登記申請手続きに伴う司法書士等に支払う作成経費
在庫廃棄費既存の事業商品在庫を専門業者に依頼して処分した際の経費
解体費既存事業の廃止に伴う建物・設備等の解体費
原状回復費借りていた設備等を返却する際に義務となっていた原状回復費用
リースの解約費リースの解約に伴う解約金・違約金
移転・移設費効率化のための設備等を移転・移設するために支払われる経費

本補助金では、「交付決定日以降、補助事業実施期間内に支払われた補助対象経費」に対して補助金が交付されます。そのため、採択発表や交付決定より前に行われた「専門家契約、最終契約、成功報酬支払」については、補助対象外となりますのでご注意ください。

また、補助事業期間開始前に経営資源引継ぎの交渉相手と最終契約書を締結しているにも関わらず、覚書等によって最終契約日を補助事業期間内に延長する行為は、補助事業期間内の最終契約とみなされず、当該経費が補助対象外となるため注意が必要です。

補助事業のスケジュール

事業承継・M&A補助金(事業承継促進枠)の第13次公募スケジュール
事業承継・M&A補助金(事業承継促進枠)の第13次公募スケジュール

①申請

申請締切日(2025年11月28日)までに、以下の準備を行い申請作業を行う必要があります。

  • GビズIDの取得
  • 事業承継計画書の作成
  • 謄本や決算書等の証憑書類の準備

申請時には上記の書類等に加えて、後述する審査にて優遇措置を受けられる加点項目の申請が可能です。例えば、以下のような加点項目があります。

  • 「経営力向上計画」の認定を受けている
  • 「経営革新計画」又は「先端設備等導入計画」の認定書を受けている
  • 公募申請時点で「地域未来牽引企業」や「健康経営優良法人」である
  • 公募申請時点で「事業継続力強化計画」の認定を受けている
  • 公募申請時点で「えるぼし認定」「くるみん認定」を受けている   など

②審査

提出した書類をもとに、事務局による審査が行われます。
審査の結果採択となった場合には、2026年1月上旬ごろを目途に採択発表が行われます。

③交付申請

採択発表後より順次交付申請が可能となります。交付申請期間は最長で5ヶ月程度となる見込みですが、交付申請が遅くなるほど補助事業実施期間は短くなるため、採択を受けた事業者は、以下の書類を揃えた上でなるべく早めに交付申請を実施する必要があります。

  • 交付申請書の作成
  • 経費区分別の提出書類の準備(見積書・見積依頼書等)
  • 相見積書・補足資料等の準備(該当する場合)

④補助事業実施

交付申請書類の提出後、約2ヶ月後を目途に交付決定が行われます。
補助事業実施期間は交付決定日(2026年1月中旬想定)より最長で約10ヶ月以内となる見込みです。

⑤実績報告

補助事業完了後30日以内、又は補助事業完了期限日までに、以下の準備を行い実績報告書の提出をする必要があります。

  • 発注書、納品書、検収書、請求書等の契約・支払の証憑を揃える
  • 納品した設備やシステムの仕様や外観等の画像・書類を揃える
  • 実績報告書の作成

期限までに実績報告書が提出されなかった場合、交付決定が取り消され補助金の受給ができなくなります。

また、提出した実績報告書の内容をもとに、事務局による実地検査が行われます。検査で納品物の確認ができない場合や、事業計画と異なる場合、検査を拒否する場合は、補助金減額や交付決定取り消しの可能性があるため注意が必要です。

⑥事業化状況報告等

補助事業完了後も5年間にわたって、事務局が指定する所定の日までに補助事業についての事業化状況を事務局に報告する必要があります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

「事業承継促進枠」は、事業承継を契機とした事業拡大や生産性向上を目指す企業にとって、最も活用しやすい申請枠となっております。

ただし、制度の活用には事前準備や申請要件を満たす計画設計が不可欠であり、要件やスケジュールを把握する必要があります。

  • 申請したいが何から取り掛かるべきか相談したい
  • 申請のサポートを依頼したい
  • 自社の事業が対象となるか確認したい

株式会社G&Nでは、こうしたご相談に対して丁寧かつ実践的なサポートを行っております。
ご興味をお持ちの方は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。

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