2025.06.27
エアコン・LED照明等の更新コストを削減!東京都の省エネ補助金の詳細を徹底解説

東京都では、脱炭素社会の実現に向けた「ゼロエミッション東京戦略」の一環として、事業所の省エネ化を支援する補助制度を展開しています。その中でも「ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業」は、エアコン・LED照明・給湯器など、事業活動に不可欠な設備の更新や運用改善を補助金で後押しする制度です。
そこで本記事では、制度の概要や補助金額、募集スケジュール、活用のポイントに加えて、最も重要な省エネの条件について詳しく解説します。
省エネの取り組みは、光熱費削減はもちろん、今後ますます重要視される地球温暖化対策におけるCO2排出量削減の取組の一環としても大きな意義を持ちます。ぜひ本記事を通じて、自社の現状に照らし合わせながら補助金の活用をご検討ください。
目次
ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業とは
「ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業(以下、本補助金)」は、都内の中小企業において「2050年CO2排出実質ゼロ」に貢献する「ゼロエミッション東京」の実現に向け、中小企業等の異なる省エネルギー化を推進するため、省エネ設備の導入と運用改善の実践を支援する制度です。
東京都内の温室効果ガス排出量のうち、業務・産業部門のCO2排出量全体のうちおよそ6割は、都内に約63万存在する中小規模事業所からの排出であり、本補助金ではこれらの中小規模事業所の省エネ・低炭素化を推進することを目的としています。
本補助金では、主に以下の事業内容が補助対象となります。
- 省エネ設備の導入:高効率空調設備、LED照明設備、全熱交換器、高効率ボイラー、高効率変圧器、断熱窓、高効率コンプレッサ、高効率冷凍冷蔵設備など
- 運用改善の実践:エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入、人感センサー等の導入、照明スイッチの細分化工事など
補助金額・補助率
本補助金では、年間のCO₂排出量をどれだけ削減できるかや、事務局(クールネット東京)が実施する「省エネ診断(省エネコンサルティング)」の受診有無に応じて、補助上限額や補助率が変動します。自社が該当する申請区分については、以下のフローチャート図を合わせて確認しましょう。
申請区分 | 補助上限金額 | 補助率 |
---|---|---|
①申請者自身で計画を作成し、年間CO2排出量を更新前と比較して 3t又は30%以上削減できる省エネ設備導入・運用改善実践を行うこと | 1,000万円 | 3分の2 |
②事前に省エネ診断を受診し、この提案に基づき、年間CO2排出量を 更新前と比較して3t又は30%以上削減できる省エネ設備導入・運用改善実践を行うこと | 2,500万円 | 3分の2 |
③年間CO2排出量を更新前と比較して28t以上削減できる 省エネ設備導入・運用改善を実践すること | 4,500万円 | 4分の3 |

なお、申請区分ごとに満たすべき要件があり、その詳細については後述する「申請区分ごとの要件」にて解説します。
補助対象者
本補助金の対象となる事業者は、東京都内において中小規模事業所を所有・使用する以下の法人・個人となります。
- 中小企業基本法による中小企業者の定義(※)に該当する会社法人(株式会社・有限会社・合同会社・合資会社等)
- 開業届を提出している個人事業主
- 学校法人
- (一般・公益)社団法人、(一般・公益)財団法人
- 特定非営利活動法人
- 医療法人
- 社会福祉法人
※中小企業基本法による中小企業者の定義(クリックで詳細表示)
以下の資本金・常時使用する従業員数のいずれかを満たすもの
業種 | 資本金 | 常時使用する従業員数 |
---|---|---|
製造業、建設業、運輸業、その他(以下を除く業種) | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
中小規模事業所について
「中小規模事業所」とは、申請者が都内において設置している事業所(建物や施設)又は、事業所内に設置されている事務所、営業所等であり、なおかつ年間の電気・ガス等の原油換算エネルギー使用量が1,500kL未満のものを指します。
年間の原油換算エネルギー使用量が1,500kLを超える事業所については「大規模事業所」に区分され、本補助金の補助対象外となります。
また、事業所における本補助金の交付を申請できる範囲は以下の通りとなります。
事業所を「所有」する場合:登記上、所有権を有する範囲まで
事業所を「使用」する場合:賃貸借契約書における専有面積
申請区分ごとの要件
今年度より、申請区分ごとに年間CO2排出量を一定以上削減することが定められており、申請時には主に以下の要件を満たして申請を行う必要があります。
- 設備要件を満たす省エネ設備を導入すること
- 省エネ計算を実施し、申請区分ごとに定める基準を満たすこと
- 事前に「省エネ診断」または「省エネコンサルティング」を受診し、「省エネ診断(アドバイス)報告書」を提出すること(申請区分②のみ)
設備要件について
都内中小クレジット算定ガイドラインに示す、都内中小クレジットの対象となる削減対策項目に掲げる要件を満たす省エネ設備を導入することが、設備要件となっています。
「都内中小クレジット算定ガイドライン」とは、都内の事業者の温室効果ガス排出総量削減を義務づけるために、エネルギー消費量の削減基準値や省エネ設備の基準を明文化したものであり、本補助金では設備ごとの基準を満たして申請を行う必要があります。
より具体的には、設備ごとに下表のような要件が定められています。
対象設備 | 要件の例 |
---|---|
高効率パッケージ型空調機 | 冷房能力や機器のサイズによって定められている冷暖房平均COP、通年エネルギー消費効率(APF)が基準値以上であること |
全熱交換器 | 全熱交換器(エンタルピー制御機能あり/なし)、徐加湿可能全熱交換機能付外機処理機のいずれかであること |
高効率照明設備 | ランプを含む照明器具(直管形蛍光ランプ、LED等)であり、LEDの場合はエネルギー効率(lm/W)が一定の基準以上であること |
高効率熱源機器 | 熱源機器ごとの定格COP又はボイラー効率が一定の基準以上であること |
高効率変圧器 | 超高効率変圧器、トップランナー変圧器(2006/2014)のいずれかであること |
高効率エアコンプレッサー | 特定の対策(インバーター制御、圧縮機、高効率モータ等)が導入されており、なおかつ電動機出力7.5kW以上であること |
高効率冷凍冷蔵設備 | 特定の対策(インバーター圧縮機、高効率照明等)が導入されている冷凍冷蔵庫、ショーケース、冷温用パッケージ型空調機等であること |
省エネ計算について
既存設備と導入予定設備の能力(例:冷暖房能力〇[kW]、風量〇[㎥/min]、一台当たりの消費電力[kW]など)や台数、稼働時間(1日当たりの稼働時間、年間稼働日数など)の情報をもとに、年間のCO2削減効果について計算(省エネ計算)を実施し、申請区分ごとの基準を満たす必要があります。
より具体的には、下図のフローに従って「省エネ計算シート(事務局指定様式)」の作成を実施する必要があり、申請区分ごとに「全体のCO₂削減量」または「削減率(%)」の両方が以下の基準を満たさない場合には、補助対象とは認められず、機器の再検討が必要になりますのでご注意ください。
- 申請区分①②の基準:「全体のCO₂削減量」が3t以上、または「削減率(%)」が30%以上となること
- 申請区分③の基準:「全体のCO2削減量」が28t以上となること
省エネ診断・省エネコンサルティングについて
事前にクールネット東京が行っている以下の「省エネ診断」または「省エネコンサルティング」のいずれかを受診し、診断後に受領できる「省エネ診断(アドバイス)報告書」を提出する必要があります。
■省エネ診断とは
事務局に所属する専門の省エネ診断員が事業所を訪問し、エネルギーの無駄を調査のうえ、具体的な省エネ対策を無料で提案します。
■省エネコンサルティングとは
事務局から「地球温暖化対策ビジネス事業者」として事前に認定・委託された専門事業者のコンサルタントが事業所を訪問し、脱炭素化に向けたコンサルティングを無料で実施します。
これらの診断・コンサルティングを受けるには、事前申込や各種帳票の準備が必要なうえ、完了までに最低でも約2か月を要するため、早めの準備が重要です。
補助対象経費
補助事業の実施にあたり、以下の経費が補助対象となります。
なお、本補助金では、既存設備の撤去にかかる費用は補助の対象外です。
また、省エネ設備への「更新」が補助要件となっているため、省エネ設備の新規導入(新設)にかかる費用も対象外となります。
項目 | 内訳 |
---|---|
設計費 | 補助対象設備の導入等に係る設計に必要な経費 |
設備費 | 補助対象設備の導入等に係る購入、製造、据付等に必要な経費その他事業実施に必要不可欠な付属機器 |
工事費 | 補助対象事業の実施に必要不可欠な、配管、配電等の工事に必要な経費 (例) 労務費、材料費、機器搬入費、機器据付費、基礎工事、 配電・配管工事、直接仮設費、断熱・保温等の設置工事に要した費用、 総合試験調整費、立会検査費、配管耐圧検査費、真空乾燥調整費、 冷媒ガス及び充填作業費、養生費、天井解体及び復旧費、点検口取付費等 |
補助対象経費の注意事項
既存設備の撤去、省エネ設備の新規導入(新設)だけでなく、下記の経費についても補助対象外となるため、注意が必要です。
- 設計費:補助対象事業に直接関係のない設計に要した費用
- 設備費:中古や故障した設備の導入、計測機器又は装置、必要不可欠とは言えない付属機器等、補助対象事業以外における使用を目的としたもの(将来用・兼用・予備用など)
- 工事費:安全対策費、土地の取得・賃貸・管理等に要する費用、道路使用許可申請費用、既存設備等の撤去・処分に要する費用、補助対象事業に直接関係のない工事に要した費用
- 諸経費:公社に提出する申請書類等の作成費用、各種保険、保証料、消費税相当額、値引き等
利益排除について
補助対象経費の中に、自社又は資本関係にある会社からの調達分(工事を含む)がある場合、利益等排除の対象となり、以下の方法によって補助対象経費の算出が必要です。
■自社またはみなし同一法人からの調達の場合
→調達品の原価(製造原価又は工事原価)をもって補助対象経費とします。
補助対象経費=原価(製造原価又は工事原価)
■上記を除く関係会社(補助対象者との持株比率が20%以上100%未満)からの調達の場合
→調達品の原価(製造原価又は工事原価)と調達品に対する経費等(販売費及び一般管理費)の合計を補助対象経費とします。
補助対象経費 = 原価(製造原価又は工事原価)+経費等(販売費及び一般管理費)
補助事業のスケジュール
今年度の募集スケジュールは以下の通りとなっています。
申請
今年度においては合計5回の公募があり、各公募回の交付申請締切日までに、以下の準備・申請作業をすべて完了させる必要があります。
- (省エネ診断を受診する場合)省エネ診断報告書の準備
- 省エネ計算の実施
- 謄本、納税証明書、賃貸借契約書等の書類準備
- 見積書、仕様書・カタログ等、機器配置図の準備
審査
申請締切後、概ね1週間~2週間を目途に申請の受理/不受理に関する通知がメールで届きます。受理となった場合には審査が行われ、採択となった場合には申請締切から約2ヶ月後を目安に交付決定通知がメールで届きます。
補助事業実施
交付決定日より事業実施が可能となり、補助事業実施期間の最終日までに、補助事業の発注、工事、検収、支払に加えて、後述する報告作業も全て完了する必要があります。
報告
補助事業完了後30日以内、又は補助事業完了期限日までに、以下の準備を行い工事完了届として報告・提出をする必要があります。
- 最終見積書、発注書、請求書、領収書等の契約・支払証憑の準備
- 導入した設備の工事前・工事中・工事後の証拠写真の準備
- 試運転結果報告書、マニフェスト伝票等の工事に係る証憑の準備
- 工事完了届の書類作成
実績報告の注意事項
期限までに報告書類の提出がなかった場合、交付決定が取り消され補助金の受給が出来なくなります。
また、提出書類の内容をもとに、事務局による実地検査が行われることがあります。検査で納品物の確認ができない場合や、事業計画と異なる場合、検査を拒否する場合は、補助金減額や交付決定取り消しの可能性があるため注意が必要です。
事業化状況報告
補助事業完了後も、基準年度の終了後を初回として以降2年間にわたって、地球温暖化対策報告書の提出によって、定期的に事業所のエネルギー使用量の削減効果や省エネ対策の取組効果について報告を実施する必要があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
本補助金は、エアコンやLED照明、給湯器等といった都内の全ての事業者の事業実施において欠かせない設備について、脱炭素化や省エネに向けた更新を支援するものであり、全ての事業者にとって活用余地のある制度となっております。
ただし、制度の活用には、複数のステップや満たすべき要件があり、スムーズな申請のためには専門的な知識と事前準備が求められます。
- 申請したいが何から取り掛かるべきか相談したい
- 申請のサポートを依頼したい
- 自社の事業が対象となるか確認したい
株式会社G&Nでは、こうしたご相談に対して丁寧かつ実践的なサポートを行っております。ご興味をお持ちの方は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。