2025.06.24
10億円以上の大規模な投資に!大規模成長投資補助金の詳細を解説

2024年より公募が開始された「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」は、最大50億円の補助が受けられる、大規模かつ成長志向の企業向けの制度です。従業員2,000名未満であれば中堅企業も対象となる点や、投資額10億円以上の大規模プロジェクトに対して支援が行われる点が、大きな特長です。
この補助金は、単なる設備投資を超えて、労働生産性の向上と持続的な賃上げの実現を国が後押しする「政策型の支援策」として位置付けられています。
本記事では、制度の概要、補助対象、要件、注意点、活用のポイントまでを詳しく解説します。今後の事業成長を本気で目指す企業の皆様は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
大規模成長投資補助金とは
「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」とは、地方における持続的な賃上げを実現することを目的に、地域の雇用を支える中堅・中小企業が、人手不足等の喫緊の課題に対応し、成長していくことを目指して行う10億円以上の大規模投資を支援する制度です。
主に以下のような取組に活用することができます。
- 工場や倉庫、販売拠点などの新設や増築
- 最先端の機械や省力化できる設備の購入
- ソフトウェアの購入や情報システムの構築
本補助金は従業員規模2000人未満の中堅・中小企業が活用することができ、多くの事業者が活用可能な制度となっています。
補助上限金額・補助率
■補助上限金額
最大50億円
■補助率
1/3以内
補助対象者
補助対象者は、⽇本国内に本社及び補助事業の実施場所を有する、常時使⽤する従業員の数が 2,000⼈以下の会社⼜は個⼈となります。会社・個⼈以外の法⼈も、政策⽬的に沿った補助事業であり、その補助事業が収益事業に関する内容である場合、補助対象者となります。
ただし、以下1〜5のいずれかに該当する場合は、「みなし大企業」として補助対象外となります。
- 発⾏済株式の総数⼜は出資⾦額の2分の1以上が同⼀の⼤企業(外国法⼈含む。)の所有に属している法⼈
- 発⾏済株式の総数⼜は出資⾦額の3分の2以上が複数の⼤企業(外国法⼈含む。)の所有に属している法⼈
- ⼤企業(外国法⼈含む。)の役員⼜は職員を兼ねている者が役員総数の2分の1以上を占めている法⼈
- 発⾏済株式の総数⼜は出資⾦額の総額が1〜3に該当する法⼈の所有に属している法人
- 1〜3に該当する法⼈の役員⼜は職員を兼ねている者が役員総数の全てを占めている法⼈
補助対象者に関する注意事項
ただし、補助対象者に該当する場合でも、農業を行う事業者が単に別の作物を作る、飲食店が新しく漁業を始めるなど、補助事業が一次産業(農業、林業、漁業)である場合には、補助金交付候補者として不採択又は交付取消となります。
※主として自家栽培・自家取得した原材料を使用して製造、加工を行っている場合は1次産業に該当します。ただし、同一構内に工場、作業所とみられるものがあり、その製造活動に専従の常用従業者がいる限り、2次又は3次産業に該当する場合があります。
例えば農業に取り組む事業者が、同一構内の工場において専従の常用従業者を用いて、農作物の加工や農作物を用いた料理の提供を行うなど、2次又は3次産業分野に取り組む場合に必要な経費は補助対象となります。
2次又は3次産業に取り組む場合であっても、加工や料理提供の材料である農作物の生産自体に必要な経費は、補助対象外となります。
補助事業の要件
以下の2つの要件を満たす必要があります。
①投資金額10億円以上(税抜きかつ、外注費・専門家経費を除く補助対象経費分)であること
②賃上げ要件を達成すること
■賃上げ要件について
補助事業の終了後3年間の補助事業に関わる従業員(非常勤を含む)及び役員の1人当たり給与支給総額の年平均成長率が、全国における直近3年間(2021年度を基準とし、2022年度~2024年度の3年間)の最低賃金の年平均上昇率である4.5%以上となる必要があります。
具体的には、申請時に4.5%以上となる目標値を事業者自身で設定し、その目標を従業員等に表明の上、達成することが要件となります。
複数の事業者がコンソーシアムを形成して申請する場合には、全ての事業者が上記の要件を満たす必要があります。
賃上げの考え方
「補助事業1人当たり給与支給総額の年平均上昇率」とは、補助事業が完了した日を含む事業年度(基準年度)の1人当たり給与支給総額と比較し、その3事業年度後の1人当たり給与支給総額の年平均上昇率のことを指し、以下の計算式によって求めることができます。
補助事業1人当たり給与支給総額の年平均上昇率={(最終年度の補助事業1人当たり給与支給総額÷基準年度の補助事業1人当たり給与支給総額)^(⅓)}-1
「補助事業1人当たり給与支給総額」の算定にあたり含む補助事業に関わる従業員は、基準年度及びその算定対象となる各事業年度において、全月分(決算月後から決算月までの12ヶ月分)の給与等の支給を受けた従業員となります。(日雇い労働者、時短勤務者は算定対象外)
賃上げ要件未達時の補助金返還について
申請時に掲げた「補助事業1人当たり給与支給総額の年平均上昇率」の目標を達成できなかった場合、未達成率に応じて補助金返還が求められます。(天災等、事業者の責めに帰さない理由がある場合を除く)
また、基準年度の1人当たり給与支給総額が、申請時点の直近事業年度の1人当たり給与支給総額以上となっている必要があります。
例:補助金額が10億円で、1人当たり給与支給総額の目標達成率が80%であった場合、未達成率である20%をもとに、以下の金額が返還となります。
補助金返還額=10億円×20%=2億円
補助対象経費
主な補助対象経費は下表の通りです。
建物費・機械装置費・ソフトウェア費は単価100万円以上のものが補助対象となる他、外注費・専門家経費の合計金額は、建物費・機械装置費・ソフトウェア費の合計金額未満である必要があります。
経費項目 | 詳細 |
---|---|
建物費 | 補助事業のために使⽤される事務所、生産施設、加⼯施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫等の建設、増築、改修、中古建物の取得に要する経費 |
機械装置費 | 補助事業のために使⽤される機械装置、⼯具・器具(測定⼯具・検査⼯具等)の購⼊・製作・借⽤や、これらと一体で行う改良・修繕、据付けに要する経費 |
ソフトウェア費 | 補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の購入・構築、借用、クラウドサービス利用に要する経費 |
外注費 | 補助事業遂⾏のために必要な加⼯や設計、検査等の⼀部を外注(請負・委託)する場合の経費 |
専門家経費 | 本事業遂⾏のために依頼した専⾨家に⽀払われる経費 |
補助対象経費に関する注意事項
補助対象となる経費は、交付決定を受けた日付以降に契約(発注)を行い、補助事業期間内に納品、検収、支払等の事業上必要な手続きがすべて完了したものとなります。
また、下記の経費は補助対象となりません。
- 太陽光発電を行うためのソーラーパネルなどの再生エネルギー売電に係る発電設備・附属設備
- 事務所等にかかる家賃、保証⾦、敷⾦、仲介⼿数料、光熱⽔費
- 電話代、インターネット利⽤料⾦等の通信費(クラウドサービス利⽤費に含まれる付帯経費は除く)
- 自動車等車両の購⼊費・修理費・⾞検費⽤(事業所や作業所のみで使用し、公道を自走できないもの・税法上の車両及び運搬具に該当しないものを除く)
- 汎⽤性があり、⽬的外使⽤になり得るものの購⼊費(PCやプリンター等を補助事業以外で使用する場合)
- 中古市場において広く流通していない中古機械設備
- 事業にかかる⾃社の⼈件費(ソフトウェア開発等) など
補助事業のスケジュール
補助事業のスケジュールは以下の通りとなっております。

申請
大規模成長投資補助金の第4次公募は、7月7日(月)に開始されています。申請締切は8月8日(金)です。書類審査に通過すれば、プレゼン審査が9月下旬に実施されます。採択発表は10月中旬の予定です。申請締切までに、以下の準備を行う必要があります。
- GbizIDプライムの取得
- 成長投資計画書の作成
- 謄本、決算書、労働者名簿等の書類準備 など
審査
提出された書類をもとに、事務局による書面審査(1次審査)とプレゼンテーション審査(2次審査)が行われます。
■書面審査
以下のような観点に沿って、補助対象者の基準を満たしているかどうかや、事業内容や財務状況・経営体制が適切であるかどうかが審査されます。
- 経営力:5〜10年後を見据えた成長ビジョンや事業戦略が明確であり、売上成長率や補助事業の売上貢献が高いこと。
- 先進性・成長性:市場での競争優位性や独自性を確保し、補助事業を通じて継続的な売上成長と生産性向上が見込まれること。
- 地域への波及効果:補助事業による雇用増・賃上げなど、地域経済への具体的な貢献が示されていること。
- 大規模性・費用対効果:売上に対して設備投資規模が大きく、付加価値の増加やシナジー効果が期待されること。
- 実現可能性:体制・財務面での実行力があり、課題やリスクへの対応方法・市場ニーズの裏付けが妥当であること。
■プレゼンテーション審査
1次審査を通過した場合、提出された成長投資計画を用いて、申請企業の経営者自身によるプレゼンテーション及び外部有識者との質疑応答が行われます。
プレゼンテーション審査の注意事項
プレゼンテーション審査では、経営者(代表取締役社長・会長等の代表権を有する方)の出席・説明が必須となっています。経営者の出席・説明がない場合、審査上不利となるため要注意です。
また、コンソーシアム形式の場合、幹事となる企業の経営者が代表としてプレゼンテーションを行う必要があります。
上記を満たしたうえで、経営者以外の役員や事業責任者、幹事となる企業以外のコンソーシアム参加企業の同席は可能です。
交付申請
申請締切から2ヶ月後(11月上旬)を目安に審査が完了し、採択発表があります。採択を受けた事業者は、事務局の指定する日付までに、以下の準備を行い交付申請手続きをする必要があります。
- 交付申請書・支出計画書の準備
- 見積書と相見積書の取得
補助事業実施
交付申請を行い、申請内容に問題がなければ交付決定が通知され、交付決定日から最長で令和9年12月末までが事業実施期間となります。
補助事業実施期間の最終日までに、補助事業の発注、納品、検収、支払に加えて、後述する報告作業も全て完了する必要があります。
実績報告
補助事業完了後30日以内、又は補助事業完了期限日までに、以下の準備を行い実績報告書の提出をする必要があります。
- 発注書、納品書、検収書、請求書等の契約・支払の証憑を揃える
- 納品した設備やシステムの仕様や外観等の画像・書類を揃える
- 実績報告書の作成
実績報告の注意事項
期限までに実績報告書が提出されなかった場合、交付決定が取り消され補助金の受給が出来なくなります。
また、提出した実績報告書の内容をもとに、事務局による実地検査が行われることがあります。検査で納品物の確認ができない場合や、事業計画と異なる場合、検査を拒否する場合は、補助金減額や交付決定取り消しの可能性があるため注意が必要です。
事業化状況報告
補助事業完了後も、基準年度の終了後を初回として以降3年間(合計4回)、当該補助事業に係る過去1年間における事業化状況・賃金引上げ等の状況を、毎会計年度(国の会計年度である4月~3月)終了後60日以内に報告する必要があります。
報告時に賃上げ要件の目標を達成できなかった場合、補助金の返還が求められますので注意が必要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「大規模成長投資補助金」は、一般的な補助金と比較して最大で50億円の補助金を受給できる点が非常に魅力的であり、新たな事業拠点の新設や、拠点での大規模な設備投資を検討する際に、最もおすすめの制度となっております。
ただし、制度の活用には、複数のステップや満たすべき要件があり、スムーズな申請のためには専門的な知識と事前準備が求められます。
- 申請したいが何から取り掛かるべきか相談したい
- 申請のサポートを依頼したい
- 自社の事業が対象となるか確認したい
株式会社G&Nでは、こうしたご相談に対して丁寧かつ実践的なサポートを行っております。ご興味をお持ちの方は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。