2025.06.20
人手不足に悩む中小企業必見|省力化投資補助金(カタログ注文型)を徹底解説

中小企業の人手不足解消や業務の効率化を目的に、2024年より「省力化投資補助金(カタログ注文型)」の公募が開始されました。この制度では、省力化効果の高い汎用設備をあらかじめ事務局が選定した「製品カタログ」から選んで導入することができ、申請から導入までがスピーディーに行えるのが特長です。
2025年6月現在、カタログ掲載製品の種類も充実していることに加えて、随時申請のため投資タイミングに合わせた申請が可能であり、手軽かつ即効性のある設備投資を検討中の事業者様にとって、非常に活用しやすい制度となっています。
本記事では、制度の詳細、申請方法、注意事項をわかりやすく解説し、スムーズな導入のためのポイントをご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
省力化投資補助金(カタログ注文型)とは
中小企業省力化投資補助事業(カタログ注文型)は、中小企業等の売上拡大や生産性向上、賃上げを後押しするため、人手不足に悩む中小企業等がIoT・ロボットといった人手不足解消に効果がある汎用製品導入にかかる費用を支援します。
カタログ注文型では、中小企業等が簡易・迅速に導入でき、なおかつ労働量の減少によって人手不足解消に効果があると認められる汎用製品を、事務局が予め「製品カタログ」として審査・登録を行っています。中小企業等は「製品カタログ」に登録された製品の導入によって、補助を受けることができます。
例えば以下のような省力化製品の導入が補助対象となります。
- 飲食サービス業や宿泊業の配膳業務の省力化のため、「配膳ロボット」を導入
- 製造業や倉庫業の入出庫、在庫管理の省力化のため、「無人搬送車(AGV)」を導入
- 飲食サービス業や生活関連サービス業の注文受付、請求・支払の省力化のため、「券売機」を導入
また、1回目の交付申請にかかる補助金の支払いが完了した後に、2回目の申請が可能であり、2回目以降も補助金支払い完了後に申請が可能な制度となっています。
※その際の補助上限金額は、2回目以降の交付申請時の補助上限金額から、それ以前に受給した累計補助金交付額を差し引いた金額となります。
補助上限金額・補助率
■補助上限金額
従業員数 | 補助上限金額(※) |
---|---|
5人以下 | 200万円(300万円) |
6~20人 | 500万円(750万円) |
21人以上 | 1,000万円(1,500万円) |
※()内は、賃上げの目標を達成した場合の補助上限金額
賃上げの目標については、補助事業の要件で解説します。
■補助率
1/2以内
補助対象者
以下の「中小企業者」「特定非営利活動法人」「社会福祉法人」が対象となります。
中小企業者(クリックで詳細表示)
従業員数や資本金の要件を満たす、会社法人(株式会社・有限会社・合同会社・合資会社等)や個人事業主が補助対象となります。
業種 | 資本金 | 常勤従業員数 |
---|---|---|
製造業、建設業、運輸業、ソフトウェア業又は情報処理サービス業、その他の業種(下記以外) | 3億円 | 300人 |
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
また、下表に該当する組合又は連合会のうち、直接又は間接の構成員の3分の2以上が下表の金額以下の資本金額・出資総額とする法人であり、下表の数値以下の従業員数を常時使用する場合には、補助対象となります。
名称 | 資本金 | 常勤従業員数 |
---|---|---|
企業組合、協業組合、事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会 水産加工協同組合、水産加工工業協同組合連合会 商工組合、商工組合連合会、商店街振興組合、商店街振興組合連合会 | ― | ― |
生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会 酒販組合、酒販連合会、酒販組合中央会 | 5,000万円 | 50人 |
酒造組合、酒造連合会、酒造組合中央会 内航海運組合、内航海運組合連合会 | 3億円 | 300人 |
上記のうち卸売業を主たる事業とするもの | 1億円 | 100人 |
※技術研究組合に関しては、直接又は間接の構成員の3分の2以上が、「中小企業者」に該当する法人・個人、企業組合、協業組合に該当する場合に、補助対象となります。
特定非営利活動法人(クリックで詳細表示)
以下の要件を全て満たす場合、補助対象となります。
- 交付決定時までに「経営力向上計画」の認定を受けること
- 広く中小企業の振興・発展に直結し得る特定非営利活動法人であること
- 従業員数が300人以下であること
- 「法人税法」に規定する「収益事業」を行っていること
- 認定特定非営利活動法人でないこと
社会福祉法人(クリックで詳細表示)
以下の要件を全て満たす場合、補助対象となります。
- 「法人税法」に規定する「収益事業」の範囲内で事業を行うこと
- 「社会福祉法」に規定する所轄庁の認可を受け設立されていること
- 従業員数が300人以下であること
補助対象外となる事業者
ただし、仮に上記の補助対象者に該当する場合でも、以下に当てはまる場合には補助対象外となるため注意が必要です。
- 過去に「ものづくり補助金」の交付決定を受け、それから10ヶ月を経過していない事業者
- 過去3年間に「ものづくり補助金」の交付決定を2回以上受けた事業者
- 「事業再構築補助金」に採択された事業者で、その補助対象事業で用いるための機器を本補助金で導入する事業者
- 観光庁の「観光地・観光産業における人材不足対策事業」の申請中、又は設備投資に対する補助金交付決定を受けた事業者
- 補助対象経費は重複していないが、「IT導入補助金」と同一又は類似内容の事業
- 「みなし大企業」に該当する事業者
補助事業の要件
本補助金では、カタログに登録された省力化製品を導入し、販売事業者と共同で取り組む事業内容であって、以下の目標を満たす事業計画に基づいて行われる事業が補助対象となります。
■労働生産性の向上目標(必須)
補助事業終了後3年間で毎年、交付申請時と効果報告時と比較して労働生産性を年平均成長率3.0%以上向上させる事業計画を策定すること
※2回目以降の交付申請を行う場合は、労働生産性を年平均成長率4.0%以上増加させる事業計画の策定が必要です。
労働生産性の向上目標における注意点
本目標を達成するために報告対象期間のみ賃金を引き上げ、実績報告以降に賃金を引き下げることは認められません。自己の責によらない正当な理由なく、効果報告時点での給与支給総額又は事業場内最低賃金が実績報告時点の値を下回っていた場合、補助金の返還が求められます。
■賃上げの目標(任意)
申請時と比較して、①事業場内最低賃金を45円以上増加させること、②給与支給総額を6%以上増加させること、の双方を補助事業実施期間終了時点で達成する見込みの事業計画を策定すること
賃上げの目標における注意点
補助事業実施期間終了時の実績報告において賃上げの目標が達成できていないことが確認された場合、補助金額の確定の際、補助上限金額の引き上げを行わなかった場合の補助金額と等しくなるように補助金額の減額が行われます。
■その他の要件
上記の目標以外にも、以下の要件を満たす必要があります。
- 導入する省力化製品に紐づく対象業種のうち少なくとも1つ以上が、自社の業種と合致したものであること
- 省力化製品を登録されている業種・業務プロセス以外の用途に供する事業でないこと
- 事業化状況報告期間終了までの間、省力化製品の導入を契機として、自然退職や自己都合によらない従業員の解雇を積極的に行わないこと
- 取得する省力化製品に対する補助金額が500万円以上の場合、保険への加入を行うこと
- 2回目以降の交付申請を行う場合は、本補助金を活用して賃上げに取り組む旨を交付申請時に宣誓すること
補助対象経費
補助対象となる経費は、省力化製品の設備投資における①製品本体価格、②導入に要する費用(導入経費)の2つが補助対象経費となります。
■①製品本体価格
専ら補助事業のために使用される下記の経費が補助対象となります。ただし、補助対象経費のうち購入に係る製品本体価格については、単価50万円以上である必要があります。
- 機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の購入又は借用に係る経費
- 機械装置、工具・器具と一体として用いられる専用ソフトウェア・情報システム等の購入又は借用に要する経費
①のうち補助対象外となる経費
以下に該当する経費は補助対象外となる他、省力化製品の販売金額に占める補助対象者の自己負担額を減額・無償とするような販売行為(実質的に還元を行う行為)や、不当な利益配賦がある場合も補助対象外とみなされます。
- 補助事業者の顧客が実質負担する費用が省力化製品代金に含まれるもの(補助事業者が試作を行うための原材料費に相当すると事務局が判断するもの)
- 対外的に無償で提供されているもの
- 中古品
- リース契約を結ぶ場合に発生する金利・保険料 など
■②導入に要する費用(導入経費)
交付申請における①製品本体価格の2割を上限として、以下の経費が補助対象となります。
- 省力化製品の設置作業や運搬費
- 動作確認の費用
- マスタ設定等の導入設定費用
②のうち補助対象外となる経費
以下に該当する経費は補助対象外となる他、省力化製品の販売金額に占める補助対象者の自己負担額を減額・無償とするような販売行為(実質的に還元を行う行為)や、不当な利益配賦がある場合も補助対象外とみなされます。
- 省力化製品の試運転に伴う原材料費
- 補助対象者の通常業務に対する代行作業費用
- 移動交通費・宿泊費
- 委託・外注費 など
補助事業のスケジュール
補助金の受給までのスケジュールは以下の通りとなります。

①応募・交付申請
まず、導入したい省力化製品及び販売事業者について、製品カタログから選定を行います。
選定後に事業計画の策定を行い、販売事業者と共同で交付申請を行います。
交付申請に必要となる主に下記のような書類を作成・準備した上で、専用の電子申請システム上から申請を行います。
- 策定した事業計画書
- 謄本や納税証明書、名簿、2期分の決算書等の書類
- 人手不足であることを証明できる書類(従業員減少、残業時間等に関する書類等)
- 賃上げに関する書類(事業場内で働く最低賃金者の賃金台帳)
②審査
補助事業の要件を満たしているかどうかに加えて、下記の要素も踏まえて総合的な審査が行われます。
審査の結果採択された場合、交付決定通知がおり、補助事業実施が可能となります。
- 事業計画に記載の省力化の効果が合理的に説明されており、省力化への投資により高い労働生産性の向上が期待できるかどうか。また、既存業務の省力化により新しい取組を行う・高付加価値業務へのシフトを行うなど、単なる工数削減以上の付加価値の増加が期待できるか。
- 賃上げによる補助上限金額引上げ適用を含め、賃上げに積極的に取り組んでいる、あるいは取り組む予定であるかどうか。(事業場内最低賃金を地域別最低賃金に比べて一定以上の水準まで引き上げる等の取組を考慮する。)
③補助事業実施
交付決定通知書に記載する日(交付決定日から原則12ヶ月以内)までが補助事業実施期間となります。
補助事業実施期間の最終日までに、補助事業の発注、納品、検収、支払に加えて、後述する実績報告も全て完了する必要があります。
④実績報告
補助事業完了期限日までに、以下の準備を行い実績報告を行う必要があります。
ただし、賃上げによる補助上限金額の引き上げを適用している場合、賃金の引上げ実績が確認できるようになるまでは実績報告を行うことができません。
- 発注書、納品書、検収書、請求書等の契約・支払の証憑
- 納品した設備やシステムの仕様や外観等の画像・書類
- 事業計画の達成状況(省力化の効果や賃上げの実績)整理
実績報告の注意事項
補助事業完了期限日までに実績報告書が提出されなかった場合、交付決定が取り消され補助金の受給が出来なくなります。
また、実績報告書の提出から後述する事業化状況報告等の終了までの間に、事務局による実地検査が行われます。検査で納品物の確認ができない場合や、事業計画と異なる場合、検査を拒否する場合は、交付決定取消の可能性があるため注意が必要です。
⑤効果報告
補助事業完了後、事務局が定める日付を起算日とし、以降3年間において毎年以下の事項について報告を行う必要があります。
- 省力化製品の稼働状況
- 省力化の効果(従業員数と労働時間及び決算情報)
- 賃上げの実績(給与支給総額及び事業場内最低賃金)
また、報告において補助事業の成果により自己負担額を超える利益が得られたと認められる場合には、受領した補助金額を上限として収益納付を行うことが求められます。ただし、効果報告の対象年度の決算が赤字の場合は免除される。
効果報告の注意事項
事業化状況報告の結果を踏まえて、以下のいずれかに該当すると認められた場合には、補助金返還が発生する可能性があります。
- 省力化を通じて人員整理・解雇を行っていた場合
- 補助事業者の故意・過失が原因で労働生産性の目標が未達となった場合
- 賃上げによる補助上限金額の引き上げを適用後、賃金を引き下げていた場合
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「省力化投資補助金(カタログ注文型)」は、労働生産性向上に資する様々な汎用製品の導入を幅広く支援する制度です。簡易かつ即効性のある省力化製品の導入が可能であるという点において、多くの中小企業にとって非常に活用しやすい内容となっています。
ただし、制度の活用には、複数のステップや満たすべき要件があり、スムーズな申請のためには専門的な知識と事前準備が求められます。
- 申請したいが何から取り掛かるべきか相談したい
- 申請のサポートを依頼したい
- 自社の事業が対象となるか確認したい
株式会社G&Nでは、こうしたご相談に対して丁寧かつ実践的なサポートを行っております。ご興味をお持ちの方は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。