2025.05.30
東京都の人気補助金に新たな申請コースが追加!内容・活用法を解説

昨年、申請開始からわずか6分で受付終了という“補助金版チケット争奪戦”を巻き起こした「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業」。
この注目制度が、2025年度に「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」としてリニューアルされ、ついに募集がスタートしました。
本記事では、補助金の概要はもちろん、2024年からの変更点、採択のカギとなる活用ポイントまで徹底解説します。
今回は新たに新設された、小規模事業者に特化した支援コースを解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
事業環境変化に対応した経営基盤強化事業とは
本補助金は、ポストコロナ等における事業環境の変化を課題と捉え、その対応策として、事業の生産性向上や業務の効率化を通じた経営基盤の強化を目的に、東京都内の事業者が創意工夫のもと行う「これまで営んできた事業の深化又は発展」の取組に要する経費の一部を補助する制度です。
東京都内の中小企業者や小規模事業者が申請可能な「一般コース」と、小規模事業者の支援に特化した「小規模事業者向けアシストコース」の2つの申請コースがあり、以下の取組が補助対象となります。
- 既存事業の「深化」:経営基盤強化に向け、既に営んでいる事業自体の質を高めるための取組
- 既存事業の「発展」:経営基盤強化に向け、既に営んでいる事業を基に、新たな事業展開を図る取組
2024年に「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業」として始まった制度であり、2025年には名称に加えて、主に下記2点の制度変更がありました。
①「賃金引上げ計画」による補助率引上げ:従来の補助率2/3より高い補助率を狙えるように
②「小規模事業者向けアシストコース」の新設:小規模事業者が申請しやすいコースが新設
本記事では、「小規模事業者向けアシストコース」について解説します。
「一般コース」について知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
補助対象となる事業
小規模事業者向けアシストコースでは、東京都内の中小企業や小規模事業者等が実施する、下表のような既存事業の「深化」または「発展」のいずれかの取組を幅広く支援します。
項目 | 取組例 |
---|---|
既存事業の「深化」 | ・既存製造工程を機械化するための機械装置、工作器具の導入 ・既存事業に関する高効率機器、省エネ設備の導入等 ・既存システムの改修 |
既存事業の「発展」 | ・新商品の量産化に必要な機械装置、工作器具の導入 ・新商品の販売や新サービス提供に必要な設備導入 ・自社で使用する新システムの構築 |
補助上限金額・補助率
補助上限金額 | 200万円(千円未満切捨て) |
補助率 | 補助対象経費の2/3以内 ただし、賃金引上げ計画を策定・実施する場合は4/5以内 |
賃金引上げ計画について
補助事業完了日が属する月の翌月から1年間において、以下の要件を全て満たす事業計画を策定し実行することで補助率の引上げが可能です。この1年間の引上げ計画期間を「賃金引上げ計画期間」と呼びます。
- 支払う給与の総額を、過去1年間の給与支給総額の1.02倍以上に増加させること(常勤・非常勤問わず従業員の給与であり、役員は含まない)
- 補助事業の実施場所内における最低賃金を、地域別最低賃金+30円以上の水準とすること
賃金引上げ計画を掲げ申請する場合、補助金交付は2回に分割して実施されます。
- 1回目:賃金引上げ要件の優遇を受けない助成率(2/3以内)で算出された金額
- 2回目:賃金引上げ計画の達成確認後に賃金引上げ要件の助成率(4/5以内)で算出された助成金から1回目に交付された金額を差し引いた金額
補助対象者
(1)都内に所在する中小企業者のうち、小規模事業者の条件を満たすもの(クリックで詳細表示)
「中小企業者」とは、会社(株式会社、合同会社、合名会社、合資会社、有限会社)及び個人事業主を指し、なおかつ下表の「常時使用する従業員数」の条件を満たす事業者が「小規模事業者」として補助対象となります。
① 「中小企業者」であること
(株式会社、合同会社、合名会社、合資会社、有限会社、または個人事業主を指します)
② 上記の中小企業者のうち、以下の表に定める「常時使用する従業員数」の基準を満たすこと
→ これに該当する事業者を「小規模事業者」とし、補助対象となります。
業種 | 常時使用する従業員数 |
---|---|
製造業、その他 | 20人以下 |
卸売業、小売業、サービス業 | 5人以下 |
補助対象外となる事業者について
ただし、「小規模事業者」に該当する場合でも、下記のいずれかに該当する場合には補助対象外となりますので注意が必要です。
- みなし大企業に該当する
- 本事業(新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業を含む)に申請中、又は交付決定を1度でも受けたことがある
- 過去に同一事業内容で、国や地方自治体等から補助を受けている
(2)申請受付開始日時点で以下の補助事業実施場所の条件を満たすこと(クリックで詳細表示)
以下の法人又は個人事業者に該当し、且つ下表の補助事業実施場所の条件を満たすことが必要です。
- 法人:本店(補助事業実施場所が都内の場合は支店でも可)の登記が都内にあること
- 個人事業者:納税地が都内にあること
補助事業実施場所 | 条件 |
---|---|
東京都内 | 申請受付開始日時点で東京都内に登記簿上の本店又は支店があること |
東京都外(ただし、神奈川県、埼玉県、千葉県、群馬県、栃木県、茨城県、山梨県に所在すること) | 申請受付開始日時点で東京都内に登記簿上の本店があること |
(3)申請受付開始日時点で以下の売上減少要件を満たすこと(クリックで詳細表示)
以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。
- 直近決算期の売上高が、「2023年の決算期以降のいずれかの決算期」と比較して減少していること
- 直近決算期において損失を計上していること
- 米国関税措置による影響により、次期決算期の売上高が、直近決算期の売上高と比較して減少することを見込んでいること
「2023年の決算期以降のいずれかの決算期」とは
2023年の決算期とは、「決算月が2023年1月から12月に含まれる会計年度」を指します。
たとえば、決算月が12月の場合は、2023年1月〜12月が決算期に該当します。
一方、決算月が3月の場合は、2022年4月〜2023年3月が2023年の決算期にあたります。
したがって、申請受付の時点で直近の決算期が2025年である場合は、2024年または2023年の決算期と比較して売上高が減少していれば、条件を満たすことになります。
また、直近の決算期が2024年である場合は、2023年の決算期と比較して売上高が減少していれば、同様に条件を満たします。
弊社では要件を満たしているか確認することが可能ですので、自社が要件を満たしているか不明な場合は、ぜひお気軽にご相談ください。
補助対象経費
主な補助対象経費は、下表の通りです。
経費項目 | 詳細 |
---|---|
機械装置・工具器具費 (単価10万円以上の投資が必須) | 製品・サービスの改良等に直接使用する機械装置・工具器具等を新たに購入・リース・レンタルする際に要する経費 |
設備等導入費 (単価10万円以上の投資が必須) | 事業実施に直接必要な設備・備品等の購入や設置工事等に要する経費 |
システム等導入費 (単価10万円以上の投資が必須) | 事業実施に直接必要なシステム構築、ソフトウェア・ハードウェア導入、クラウドサービス利用に要する経費 |
補助対象経費の注意点
補助対象経費に関しては、対象となるもの、ならないものが細かく分類されています。
以下の主な注意点も踏まえて、自社の事業経費が補助対象となるかよく確認しましょう。
- 「機械装置・工具器具費」「設備等導入費」「システム等導入費」に関しては、単価10万円未満の設備等購入のみである場合、補助対象外となります。
- 中古品の導入や、土地・建物、車両等の購入に要する経費は補助対象外となります。
補助事業のスケジュール
1.申請
申請締切日(6月13日)までに、以下の書類を準備し申請を行います。
- 申請様式(交付申請書)に事業者情報や事業計画を記載する
- 誓約書(反社会的勢力排除に関する誓約書、申請に関する誓約書)
2.審査
申請締切日(6月13日)から約2ヶ月間を目安に審査(書類審査・面接審査)が実施され、採択された事業者には交付決定通知書が送付されます。まず、書類審査が実施され、書類審査の通過者には以下の書類の追加提出が求められます。
- 謄本や納税証明書等の資料
- 見積書や相見積書、カタログ等(単価30万以上の設備導入がある場合)
- 設計図や平面図等の図面(設備機器等の購入の場合)
- 賃金引上げ計画書
また、書類審査通過者には、事務局より面接審査の日時と実施場所等の案内がメールにて届きます。(所要時間は1時間程度)
面接審査の結果、採択となった事業者には交付決定通知書がメールにて送付され、補助事業の実施が可能となります。
面接審査の注意事項
面接審査の日程は、事務局が指定する日時で行われ、申請者による日時変更はできません。
また、原則として対面形式であり、代表者・役員・従業員に限り最大2名まで出席可能です。
万が一出席できない場合は、申請を辞退したものと見なされ不採択となりますので注意が必要です。
3.補助事業実施
交付決定後より補助事業の実施が可能となります。事業実施期間は交付決定日から最大1年間となっており、期間内に補助事業における発注・納品・検収・支払の全ての工程を経て事業を完了するとともに、後述する実績報告書類の提出まで完了する必要があります。
また、補助事業実施においては、アドバイザー派遣を任意で依頼することができます。
アドバイザー派遣について
補助事業者に対し、以下の時期に経営アドバイザーの派遣を受けることが可能です。派遣先は補助事業の実施場所であり、現場や帳簿の確認、ヒアリング等を行った後、以下の観点で助言を行います。
①交付決定日以降の補助事業者が希望する日時【任意】
経営改善に向けた助言、事業を効果的に実施するための助言などを行います。
②実績報告における完了検査時【必須】
経営改善に向けた助言、完了した補助事業を効果的に運用するための助言などを行います。
4.実績報告
補助事業完了後30日以内、又は補助事業実施期間最終日のうちいずれか早い日を期限とし、それまでに以下の書類を準備し実績報告を行う必要があります。
- 契約書、納品書、請求書、領収書等の支払関連の証憑書類
- 設備や原材料のカタログや写真等、システムの仕様書等の経費毎の証憑書類
- 実績報告書(事務局指定様式)の作成
提出された実績報告書類をもとに、事務局による完了検査が行われます。
完了検査では、補助事業の実施が適正かどうか、購入物等の現地確認や経理関連書類の原本照合を行い、補助金の交付額を決定します。
なお、完了検査においてはアドバイザー派遣が必須であり、アドバイザーによる助言も同時に実施されます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」は、一般的な補助金と異なり、既存の製品やサービスの品質向上や、新規開発する製品やサービスの販売促進に活用可能であり、尚且つ高い補助率(2/3)であることから、非常に使い勝手の良い制度となっています。
ただし、制度の活用には、複数のステップや満たすべき要件があり、スムーズな申請のためには専門的な知識と事前準備が求められます。
・申請したいが何から取り掛かるべきか相談したい
・申請のサポートを依頼したい
・自社の事業が対象となるか確認したい
株式会社G&Nでは、こうしたご相談に対して丁寧かつ実践的なサポートを行っております。ご興味をお持ちの方は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。